[P-1-065] 健常ボランティアの拡散異方性と認知機能検査の相関に関する検討
【背景・目的】精神疾患の早期診断や治療効果判定に、客観的な検査や診断法はない。精神状態と脳機能MR画像の関連性が分かれば、この関連性は精神疾患の病態解明や診断治療に役立つことが期待される。今回、健常ボランティアの拡散異方性(Fractional Anisotropy, FA)と知能指数(Intelligence Quotient, IQ)に相関があるか否かを検討した。【方法】健常ボランティア35名(男性23名、女性12名、24歳から56歳 [平均年齢37歳])の拡散テンソル画像をSIEMENSE MAGNETOM Verio 3T、Coilは32ch head coilで撮像した。撮像条件は、Repetition Time/Echo Time=9400/92[ms]、Field of View=196×196[mm]、Voxel size=2×2×2[mm]、b値=0,1000[s/mm^2]、64軸とした。認知機能検査としてJapanese Adult Reading Test(JART)を施行し、予測全検査IQ、予測言語性IQ、予測動作性IQを算出した。得られた拡散テンソル画像をFunctional MRI of the Brain Software Library(FSL)で処理し、FA画像を取得した後、Tract-Based Spatial Statistics(TBSS)を行った。FAの男女差は、年齢と予測全検査IQを共変量に入れた対応のない2群間のt検定を、FAと年齢、FAとIQの相関は、多重補正比較後に相関解析を閾値は0.54~1で行った。【結果・考察】FAの男女差では、女性の脳弓のFAが高くなり、男性が脳の前後、女性が左右の神経連絡が強いという先行研究と一致していた。FAと年齢の相関関係は、右中前頭回に負の相関が認められ、年齢が上がるとミエリンが脱落していき、白質の体積が減少するためだと考えられた。FAと予測全検査IQの相関関係は、右中前頭回と右眼窩前頭皮質に負の相関が認められ、また、FAと予測言語性IQ並びに予測動作性IQとの相関関係は右中前頭回に負の相関が認められた。これらは、中前頭回は流動性知能、眼窩前頭皮質は感情に関する部位とされており、流動性知能や感情に関する領域のFAの低下がIQの上昇に関係している可能性が示唆された。今後さらなる検討をする事で臨床応用できると考えられた。【結語】健常ボランティアのFAとIQについて、中前頭回と眼窩前頭皮質に負の相関が認められた。