[P-1-066] TBSSと心理物理検査との相関解析によるタイミング予測に関与する小脳領域の同定
【目的】小脳は運動の制御や調節に関与するが、近年ではこれらに加えて小脳の特に半球部がタイミングの予測機能などの高次認知機能に関与することが示唆されている。小脳プルキンエ細胞が特異的に障害される疾患である脊髄小脳変性症6型(Spinocerebellar ataxia type6:SCA6)の患者にて心理物理検査とDTI撮影を行い、心理検査の成績とDTI解析結果の相関解析を行うことで高次機能に関与する小脳皮質領域の同定を試みた。【方法】患者群 12名(平均年齢62.4±5.8歳)、健常群12名(平均年齢63.2±6.2歳)を対照とした。心理物理検査ではオッドボール課題(一定の周期で提示される視聴覚刺激が不意に一拍抜ける(missing条件)か、色と音が変化する(deviant条件)ので、それに気づいたら素早くボタンを押す)を用いた。画像は3T MRI(Achiva TX, Philips)を用いてDTI(MPG32軸、b値 =0, 1000[s/mm2]、TE/TR 85ms/6158ms、FOV=256×256mm2、slice thickness=3.0mm)を撮影し、FSL4.1を用いてtract-based spatial statistics (TBSS)解析を行い、小脳アトラスを用いて小脳半球領域ごとの白質の平均FA(fractional anisotropy)を求め、心理検査で得られた反応時間とFA値との相関を示す小脳領域を同定した。【結果】相関解析からは、患者群のみでmissing条件では右上小脳半月(crus I)に、deviant条件では右後四角小葉(lobuleVI)のFA値に反応時間との有意な負の相関を認めた(p<0.05, Speaman’s rank correlation)。【考察】今回の結果からは、外界からの刺激に反応する際には右後四角小葉、内的リズムを用いたタイミング予測には右上小脳半月が関与していることが示唆された。特に上半月小葉は前頭連合野と強い結合が知られており、前頭前野と小脳とのネットワークがタイミング予測の機能に関与している可能性がある。