[P-1-082] 出血がDWI-thermometryに及ぼす影響:SAH患者における初期検討
【目的】拡散強調画像を用いたDWI-thermometryは、側脳室内の脳脊髄液にその適用範囲が限定されているとはいえ、その応用は、すでに、加齢に伴う脳温の変化、もやもや病、多発性硬化症、正常圧水頭症、強迫神経症における脳温の比較検討に広がっている。しかしながら、脳室内の水分子の拡散は、その組成に大きく影響されるため、水分子の拡散現象の温度依存性を利用したDWI-thermometryもその影響を免れない。本報の目的は、DWI-thermometryに与える脳内出血、特に、くも膜下出血(SAH)における影響の度合いを調査することである。【方法】17名(男性3名,女性14名)、平均56.6(SD13.3)才、年齢範囲34-75才のSAH患者に対し、DWIを施行し温度計測を行った。DWIは、1.5T全身用スキャナ(Gyroscan Intera, Philips)により、EPI(TR:6000ms, TE 71ms)、SENSE、MPG15、b=1000s/mm2、NEX2、2x2x3mmのボクセルサイズを用いて計測され、T = 2256.74 / ln (4.39221 / D) - 273.15(T:温度℃、D:拡散係数mm2/s)により温度に変換された。出血の程度は、Fisher scale(FS:1-4)および放射線科医の印象(少ない:1,中程度2:,多い:3)によって分類された。【結果】SAH患者が血腫や高いFSレベルにある場合、出血は側脳室(LV)と延髄槽(MC)の両者で認められ、これらはDWI-thermometry に大きく影響した。DWI撮像は出血後様々な日数を経て行われたため、これもDWI-thermometry の結果に影響したと考えられた。出血程度とDWI-thermometry の結果との間に強い相関は見られず(FS2-3: p=0.07; FS3-4: p=0.57; FS1-3: p=0.06)、FS2の群では、結果に対する影響がほとんど見られなかった。FSが2より大きく、DWI計測が発症後3日以内の場合には、出血の影響が他と比べて大きくなった。DWI- thermometryは側脳室内のD値を用いて計算されるが、SAH患者の結果から、MC内に多量の出血がある場合も結果に影響することが分かった。【結言】SAH患者群によりDWI-thermometry に対する出血の影響を調査した結果、出血の程度、血液の場所、計測のタイミングがDWI-thermometry の値に影響した。SAH患者に対してDWI- thermometry を行う場合はFS2までが望ましい。