[P-2-139] 3T-MRIによる耳下腺内顔面神経の描出能:アナログコイルとデジタルコイルの比較
【背景,目的】近年の高磁場MRI, 多チャンネルコイル, 高速撮像法等の進歩により, 耳下腺内顔面神経の一部が描出可能との報告が見られる. 一方, デジタルコイルは受信したアナログ信号をすぐにデジタル変換し画像を作成できるためSNRが向上し微細構造の描出が期待できるが, これまでに耳下腺内顔面神経の描出に応用した報告はない. 3T-MRIによる耳下腺内顔面神経の描出能を, アナログコイルとデジタルコイルで比較することを目的とした.【対象と方法】同意の得られたボランティア15名の右耳下腺を撮像した. 使用装置はPhilips社製Ingenia 3T (デジタルコイル装置)とAchieva 3T (アナログコイル装置)で, いずれも撮像シーケンスは3D-T2FFE, コイルはFlex S coilを使用した. 撮像条件はTR:11ms, TE:6.9, Flip Angle 28°, 収集ボクセル0.71×0.72×1.1mm, 脂肪抑制:PROSET, スライス断面:横断像, 収集時間:5分3秒で, 2種類の装置の撮像条件は全て同一とした. 評価項目は, 顔面神経のSNR, 耳下腺と顔面神経のコントラスト, 耳下腺内顔面神経の計測可能最大長, 放射線科医2名による描出能の4段階スコアによる視覚評価である. 統計学的解析はウィルコクソンの符号付順位検定を用い, p < 0.05を有意とした.【結果】SNRはデジタルコイル48.3, アナログコイル31.2, コントラストはデジタルコイル0.35, アナログコイル0.28でデジタルコイルが有意に高く, 顔面神経の計測可能最大長はデジタルコイル20.0mm, アナログコイル17.5mmでデジタルコイルが有意に長かった(p<0.05). 視覚評価は観察者2名それぞれデジタルコイル2.6, 2.5, アナログコイル2.3, 2.2と, デジタルコイルで高いスコアを示したが有意差は認めなかった.【考察】デジタルコイルは, 信号を処理する過程で雑音の混入が少ないため, SNRが高くなり, これにより耳下腺と顔面神経のコントラストが向上し, 顔面神経の計測可能最大長, 視覚評価スコアも高くなったと考える.【結論】3T-MRIによる耳下腺内顔面神経の描出能において, デジタルコイルはアナログコイルより優れる.