第42回日本磁気共鳴医学会大会

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ポスター

脳のfMRI

脳のfMRI

Fri. Sep 19, 2014 11:12 AM - 12:00 PM ポスター会場 (5F 通路)

座長:瀧澤修(シーメンス・ジャパン株式会社 イメージング&セラピ一事業本部)

[P-2-174] ワーキングメモリ課題における異なる方略を用いた訓練の脳活動と神経線維への影響

小淵将吾1, 山本詩子2, 田中美里3, 廣安知之2 (1.同志社大学大学院生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻, 2.同志社大学生命医科学部 医情報学科, 3.同志社大学理工学部)

【目的】情報の処理をしつつ,一時的に必要な情報の保持をする働きを担うのがワーキングメモリ (WM) である.WM容量を向上させることにより,反応抑制課題成績の向上や,注意・欠陥多動性障害の症状の改善が見込まれている.しかし,効果的なWM容量の向上方法は未解明である.本研究では,WM容量を計測する課題の一つであるリーディングスパンテスト (RST) における異なる方略を用いた訓練が,脳活動と神経線維へ及ぼす影響について検討する.【方法】健常者12名 (男性10名,女性2名; 平均年齢22.3±0.95歳) を対象に介入実験を行った.被験者12名中8名を1ヶ月間WM課題の訓練を行う訓練群 (イメージ方略の訓練群5名,リハーサル方略の訓練群3名),残り4名を訓練を行わない統制群に分けて実験を行った.1か月間のWM課題の訓練前後でRST時の脳機能画像と拡散強調画像を1.5 [T] のMRI装置を用いて取得した.データ解析にはSPM8を使用し,脳活動は個人解析と訓練群ごとの集団解析 (paired t-test) を行い (p < 0.001, uncorrected),拡散テンソル画像法によって測定される拡散異方性 (FA) の変化をVoxel-based analysisを用いて検討した.またDTIStudio (FACT法) を用いてTractographyを行った (FA > 0.2, angle < 70°).【結果・考察】訓練前後のRSTの正答率の変化は,イメージ方略の訓練群においてのみ成績が上昇した.MRIデータより,イメージ方略の訓練群においては訓練前に比べ,訓練後に前部帯状回と右楔部に有意な脳活動の上昇が生じ,右側頭葉のFA値が有意に上昇した.FA値が有意に上昇した領域からTractographyを行った結果,神経束である右下縦束が描画された.WMの中央実行系の機能を担うとされる前部帯状回の脳活動の上昇,そして視覚イメージに関する神経束である右下縦束のFA値上昇により見込まれる神経線維の髄鞘化は効率の良い情報伝達を可能にし,効果的なWMの使用につながったと考えられる.【結論】RSTにおける効果的な方略はイメージ方略であり,訓練が脳機能と脳構造に影響をあたえた.したがって,WMの訓練方法の違いによって,容量向上の効率や脳活動,また神経線維への影響が異なることが示された.