[P-3-216] 磁化移動効果を用いたポリエチレングリコールの浸透性測定
【目的】高分子化合物であるポリエチレングリコール(polyethylene glycol: PEG)は,文化財保存の分野において,水浸出土木材を保存処理する薬剤として使用されている.我々はMRIを用いて,高分子物質に対して反応性のある磁化移動(magnetic transfer:MT)効果とPEGの浸透性を評価した.【方法】1.5テスラMR装置(東芝メディカルシステムズ社製)を用いて実験を行った.試料は,水浸出土木材(マツ属二葉松類,直径11.5 cm,長さ27 cm)を3分割に裁断し,長径10 cm と5 cmに裁断したものとした.溶液浸透期間を2週間として,0, 20,40,60,80,100 %濃度のPEG溶液に浸したMRIを各々撮像した.撮像条件は,3D Field echo法にて,TE:5.5 ms,TR:20.2 ms,Flip Angle:20 degree,スライス厚:6 mm, スライス枚数:50 スライス, FOV: 30 × 30 cm,撮像マトリクス:256 × 256, 帯域幅:± 61 Hzとし,MTC pulseありとなしの2種類の画像を取得した.MTC pulseを付加した場合はMTC frequency:2000 Hzとした.収集したMR画像から,辺縁部,中間部,深部に対して関心領域を設定し,MTC pulseありとなしの画像から磁化移動率(magnetic transfer ratio:MTR)およびその変化率ΔMTR(PEG(+) - PEG(-))を算出した.【結果】PEG溶液濃度が上昇するとMTRが低下した.また,10cm裁断木は,中間部・年輪中心部はPEG 40 %まで,辺縁部は60 %までΔMTRの低下が持続した.一方,5cm裁断木は,中間部・年輪中心部はPEG 80 %まで,辺縁部は100 %までΔMTRの低下が持続した.【結論】容積が大きい水浸出土木材は,低濃度PEGで水との置換が可能であるが,高濃度PEGに置換するには2週間では不十分であることが示された.MTRを計測することで,非破壊の状態でPEGの浸透性を評価することが可能であった.