[P-3-220] MR造影剤内包高分子ミセルと格子構造を有する生分解性ゲルを組み合わせた脳内薬剤投与法の検討
【背景・目的】脳腫瘍に対する脳内薬剤投与法の治療効果の向上、ならびに副作用の低減のために、我々は、MR造影剤を含む高分子ミセルと格子構造を有する生分解性ゲルを用いた薬剤投与法を検討してきた。本発表では、ゲルに内包された高分子ミセルの放出速度およびラット脳腫瘍モデルに対する投与実験について報告する。【対象・方法】格子構造を有する生分解性ゲルは、2種類の高分子素材(TAPEG並びにTHPEG: NOF Corporation)を同濃度・同量混合することで作製できる。高分子ミセルはGd-DOTAを内包しており、その粒子径は80 nm程度であった。MR画像は前臨床用7.0テスラMR装置(Kobelco, Jastec, Bruker-biospin)を使用して取得した。高分子ミセルのゲルからの放出速度は、PCRチューブ内に高分子ミセルおよび低分子造影剤(Gd-DOTA)を混合して作製したゲルと、ゲルの上に流し入れたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の信号変化を計測して評価した。ヒト膠芽腫細胞U87MGの同所移植モデルラットへの脳内投与実験では、腫瘍内でゲル化するよう、2種類の高分子素材を先端で混合できる二連式カテーテルを開発・使用し、高分子ミセルを含むゲル用素材または高分子ミセルのみを投与した時のMR信号の変化を観察・評価した。【結果・考察】ゲルからの放出速度の検討では、低分子造影剤を含むゲルの信号値が速やかに低下したのに対し、高分子ミセルを含むゲルの信号値の低下は緩やかであり、ゲル作製2日後においても、PBSよりも高信号を保っていたことから、ゲルへの内包により高分子ミセルの放出が抑制され、徐放性が向上したと考えられた。ラット脳腫瘍モデルへの投与実験では、高分子ミセルのみを投与した場合、腫瘍外への大規模な早期漏出が認められたのに対し、ゲル用素材とともに投与した場合、わずかな漏出はあったものの、腫瘍内に局所的な信号変化を持続的に確認することができた。このことから、腫瘍内において高分子ミセルを含むゲルが作製され、徐放化が可能になったと考えられた。【結論】高分子ミセルと生分解性ゲルを用いた薬剤投与法を検討し、漏出を抑えた腫瘍内局所投与が可能であることを示した。