第42回日本磁気共鳴医学会大会

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シンポジウム

シンポジウム1

fMRI でみる脳-視覚コラムからシステムまで-

Thu. Sep 18, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 第1会場 (5F 古今の間北・中)

座長:中井敏晴(国立長寿医療センター 神経情報画像開発研究室), 福永雅喜(生理学研究所 心理生理学研究部門)

[S1-1] 視覚意識と初期視覚野

山本洋紀 (京都大学大学院人間・環境学研究科 認知行動科学講座)

私たちは、刺激と知覚が乖離する時(ないはずの物が見える等)のfMRIによって、視覚意識の脳過程を調べています。本講演では、視覚皮質を対象にした最近の下記研究を紹介し、視覚意識に果たす初期視覚野の役割を考察します。

1) ない物が見える:アモーダル補完に関するfMRI1
視覚物体の多くは他物体で遮蔽されていますが、人は遮蔽部分を容易に補完し、物体の全体像を即座に把握できます(アモーダル補完)。本研究では、遮蔽物体を見ている際の脳活動をfMRIで計測しました。その結果、V1/2野において、遮蔽されて欠損した視覚像がまるで絵を描くように補完されて、物体の全体像が再構成されていることを明らかにました。さらに、V1の補完に関わる活動は、事前に見ていた物体の形を反映して、補完が必要でないと判断される場合には生じないこともわかりました。人間の視覚系は、外界に対する「解釈」を加えた、より高次の処理を行っていることを示しています。また、視覚皮質の活動は、見えている物体だけでなく、見えなくてもその存在を感じるだけで生じることが確認されました。

2) ある物が見えない: 視覚意識の個人差に関するfMRI2
左右の目に全く異なる画像が入力されると、知覚は揺らぎ安定しなくなります。この現象は両眼視野闘争(BR)と呼ばれ、視覚入力は一定のまま、主観的な知覚だけが不随意的に切り替わることから、視覚処理に関わる神経活動と視覚意識に関わる神経活動を分離できる現象として、数多くの神経科学的研究の対象となってきました。ところが、BRの脳過程については、まだ十分にはわかっていません。本研究では、BRによって見えなくなった目標刺激によって引き起こされた低次視覚野の脳活動に着目したfMRI実験を行いました。この結果、目標刺激が見えなくなる時間が長い人ほどV3野とV4v野の反応が弱いことがわかりました。この結果は低次視覚野の活動が両眼視野闘争の知覚交替のダイナミクスの決定に関与していること示しています。

1. Ban H., et al. (2013) The Journal of Neuroscience, 33(43), 16992-17007.
2. Yamashiro H, et al. (2014) Journal of Neurophysiology, 111(6), 1190-202.