第42回日本磁気共鳴医学会大会

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シンポジウム

シンポジウム2

DDSとMRIトレーサーの現状

Thu. Sep 18, 2014 3:30 PM - 5:20 PM 第1会場 (5F 古今の間北・中)

座長:青木伊知男(放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター)

[S2-1] 脳内のマンガンについて:生体マウスとMRIを用いた基礎医学研究

渡辺尚志 (マックス・プランク生物物理化学研究所)

マンガンMnは人間を含め生物に必須である。脳においても抗酸化やグルタミン生成に必須である。様々な病態、例えば、Mn中毒、肝不全、脳梗塞において、全身や脳局所においてMnの蓄積が起こり、T1強調MRIにおいて高信号を呈する。従って、Mnに関する医学研究にはMRIが非常に有用である。一方、NMR研究においては当初から緩和時間短縮のため常磁性体が用いられてきた。1961年に高分子がMn2+イオンに作用すると、濃度あたりの緩和率が大幅に上昇することが報告されて以来、Mn2+はNMRを用いた医学研究において最も繁用される常磁性体となる。MRIの発明後も、Gdキレート剤普及前はまずMn2+が使われた。そしてMn2+の細胞への取り込みおよび蓄積によるMRI信号の増強が、細胞の活動性と関連していると報告されて以来、MRIおよびMn2+を用いた基礎医学研究が新たに脚光を浴びた[1]。本シンポジウムにおいて、こうした背景を振り返った後、最近の私共の観察を報告する。まず、Mn2+投与後生体マウス脳の9.4T高空間分解能MRIをGd-DTPA投与後MRIおよび組織染色の光学顕微鏡像と比較した。嗅球、海馬体、小脳において、主要な神経細胞体が密集している組織、シナプス入力が密集している組織はMn2+による信号増強が大きい。顆粒細胞体が密集している組織、神経細胞体が少ない組織は信号増強が小さい。これらはラット脳における所見[2]とほぼ一致する。第二に、Mn2+投与後生体マウス脳のT1短縮を計測した結果、9.4T に比べて、2.35Tでは緩和率増加が2.4~4.4倍であった。これは、生体脳内において、Mn2+は、粘性の高い環境にあるかもしくは高分子に結合しているためその可動性が制限されて回転相関時間が延長し、濃度あたりの緩和率が上昇していることを示す[3]。[1] Magn Reson Med 1997;38:378. Magn Reson Med 2002;48:927 [2] Neuroimage 2004;22:1046 [3] Brain Struct Funct 2014;doi 10.1007/s00429-014-0742-8