第42回日本磁気共鳴医学会大会

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シンポジウム

シンポジウム2

DDSとMRIトレーサーの現状

Thu. Sep 18, 2014 3:30 PM - 5:20 PM 第1会場 (5F 古今の間北・中)

座長:青木伊知男(放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター)

[S2-2] 超高磁場MRイメージングを用いた生体内免疫細胞動態追跡

森勇樹1,2, 吉岡芳親1,2 (1.大阪大学免疫学フロンティア研究センター 生体機能イメージング, 2.(独)情報通信研究機構・大阪大学 脳情報通信融合研究センター)

生活習慣の変化や社会情勢の変化に伴い、脳卒中、認知症、多発性硬化症などの中枢神経疾患の増加が大きな社会問題となり、その病態解明は急務である。近年の研究により、中枢神経疾患などの発症・増悪・治癒過程に、免疫細胞が重要な関与をしており、また病態時だけでなく、正常な脳においても、シナプスや死細胞の除去といった脳環境の維持に不可欠な事象に関わっていることが示されてきている。神経系、免疫系ともに繊細なネットワークのもとに成り立つシステムであり、相互に与える影響を評価するために、非侵襲的可視化法による経時的な免疫動態観察の登場が望まれている。
細胞追跡技術におけるMRIは、光イメージングやCT、PETなどに比べ、感度の低さが問題とされてきたが、標的細胞を磁気粒子で標識し、超高磁場で観察することで、生体組織内においても「単一細胞レベルの動態追跡」が可能になり、これまでの限界を打ち破る新しいMRI による画像診断技術として大きな期待を集めている。脳など生体深部組織における「単一細胞レベルの動態追跡」はPETなどの核医学的手法や光イメージングなどでは、空間分解能の不足や、観察範囲が限られるなど極めて困難であり、高い空間分解能を持つ超高磁場MRIによって初めて観察される可能性がある。
我々は、小動物用11.7テスラMRI装置を用い、今まで視覚的に捉えることが困難であった、もしくは十分に評価出来なかった生体深部の分子・細胞・組織レベルのライブイメージング技術開発研究に取り組んできた。標的細胞を磁気粒子で標識し、MRIを用いて観察することで、マウス生体脳内における1細胞レベルの細胞動態をリアルタイムに可視化することに成功した。さらに10分オーダーの時間分解能でタイムラプス動画を作成することで、生体組織内における1つの細胞のダイナミックな動きを長時間にわたり追跡可能になっている。本講演では、これらの結果を紹介し、MRIを用いた細胞追跡の可能性と課題、展望について述べる。我々の新しい技術によって得られる空間的・時間的情報は、正常時の脳環境維持における免疫細胞の役割や、神経免疫疾患病態メカニズムの解明に大いに寄与するものと期待される。