第42回日本磁気共鳴医学会大会

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シンポジウム

シンポジウム4

拡散強調MRIで何が見えるか-水透過性と灌流の可視化-

Fri. Sep 19, 2014 1:40 PM - 5:20 PM 第1会場 (5F 古今の間北・中)

座長:押尾晃一(慶應義塾大学医学部 放射線診断科), 小畠隆行(放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター)

[S4-2] アクアポリンによる水輸送調節:細胞膜アクアポリンと細胞内膜アクアポリン

石橋賢一 (明治薬科大学 病態生理学教室)

アクアポリンは水やグリセリンなどの小粒子を通す13個(AQP0~12)の膜蛋白ファミリーである。ヒ素などの金属やH2O2やCO2, NH3, NOなどのガスも通す機能的多様性や、全て欠損マウスの解析は進んだが、特異的な抑制薬の開発は進行中である。細胞運動や細胞増殖への関与から、炎症、免疫、腫瘍などの病態修飾への役割も想定されている。水透過に関しては浮腫や脱水の細胞レベル、さらには細胞内での水輸送の制御にも関心がもたれている。
リンパ管がない脳で循環している脳脊髄液(CSF)には、脈絡叢で作られて脳室からクモ膜下腔へとぬけて脳表面のクモ膜顆粒から吸収される古典的経路と、脳に分布する毛細血管周囲腔(=Virchow-Robin腔))での分泌吸収もある。血液脳関門を形成する脳毛細血管の水輸送は、血管内皮細胞のAQP1, AQP11とグリア細胞アストロサイトの足突起に分布するAQP4で制御される。とくにAQP4はその欠損マウスの解析から細胞性浮腫を増悪させ、血管性浮腫の回復を促進させる:虚血や髄膜炎ではAQP4欠損マウス病変が軽微になり、逆に脳膿瘍では病変が悪化する。またAQP4はグリア細胞の運動を促進して傷害回復を促進する。AQP1欠損マウスではCSF産生が20%低下する。AQP11欠損マウスでは脈絡叢上皮細胞の空胞変性が認められ、血清Na濃度を変化させる浸透圧負荷によってAQP4の変化に連動する。
AQP11は腎臓近位尿細管の細胞内に発現しており、欠損マウスでは小胞体拡張を主体とする細胞内巨大空胞とオートファジーが生後1週で観察され、アポトーシスとのう胞化が引き続いておきて、生後3週には多発性のう胞腎となって生後1カ月ほどで腎不全で死ぬ。同様の細胞内空胞は肝細胞(門脈周辺)や小腸上皮細胞(絨毛先端)にも認められており、水輸送のさかんな細胞の細胞内水輸送の制御にAQP11が重要な役割をしていることが示唆される。一方AQP11と構造の似た細胞内に分布するAQP12の欠損マウスは実験的急性膵炎が重症化し分泌顆粒の蓄積巨大化が見られることから水分泌への関与が示唆される。