第42回日本磁気共鳴医学会大会

Presentation information

特別講演

高温超伝導材料の物理と磁石の開発の現状

Thu. Sep 18, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 第1会場 (5F 古今の間北・中)

座長:梅田雅宏(明治国際医療大学 医療情報学)

講師:前野悦輝,斉藤一功

[SL1-2] 高温超電導体を用いた超電導磁石の現状と将来の展開

斉藤一功 (神戸製鋼所 電子技術研究所 超電導研究室)

超電導磁石の特徴は電気抵抗が完全にゼロであることで、これを利用して10000ガウスを超える安定した磁場が得られる。超電導磁石は極低温まで冷却する必要があるが、近年、冷却に必要な液体ヘリウム価格が上昇するとともに、供給が不安定になっているため、液体ヘリウムを使用しない超電導磁石の実用化への期待が高まっている。1986年の酸化物超伝導体の発見はそれまでの常識を覆した。発見された物質は当時の超電導転移温度を大きく上回ったために“高温超電導体”とよばれた。発見を機に、超電導応用に対する期待は大きく膨らみ、液体ヘリウムレスの超電導磁石をゴールとして世界中で数多くの研究開発が始まった。しかし発見から約30年が経過するが、実用的なMRI用超電導磁石には適用されず、液体ヘリウムの使用も続いている。この理由として線材加工の難しさがあげられる。高温超電導体は加工性のきわめて悪い酸化物であることから、経済合理性を持った価格で実用線材を供給するための開発が必要となっており、国内外のメーカーにおいて進められている。これに加えてMRI用超電導磁石では必須の超電導接続技術やクエンチ保護技術なども開発途上の段階である。こうした中で、高温超電導体線材のMRI超電導マグネット検証を目的として、ビスマス系高温超電導線材を使用したMRIシステムが試作されている(科学技術振興機構、先端計測分析技術・機器開発プログラム)この超電導磁石は冷凍機のみで冷却され、520mmの室温ボアに3テスラの磁場を発生するように設計されている。2011年にシステムは完成し、世界で初めて酸化物超電導体を用いた超電導磁石でのMRI画像の取得に成功している(1)。試作されたシステムは価格や保守性などの点で実用化レベルまでには課題はあるが、高温超電導体を用いたMRIシステムが可能であることを示した点でこの分野のさきがけとなった。以上述べたように、高温超電導体を用いた超電導磁石の実現には開発すべき課題が多くあるものの、その実用化に向けた開発は精力的に行われており、着実に進歩している。1)Terao et al : IEEE Trans Appl. Supercond. Vol23, no6 2012, pp4400904-4400907