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[CD1-01] 行為間比較の構造
行為間比較(Confronto Tra Azioni;CTA)は、認知神経リハビリテーションにおける「訓練としての行為」と「回復しようとしている現実の行為」とを関連付け、学習した行為の汎化の問題、あるいは学習した行為がセラピストのガイドなしでは行えないという自律性(Autonomia)の問題を解決するための仮説として提案された認知神経リハビリテーションにおける新たなツールであり、2011年11月にイタリア・サントルソ認知神経リハビリテーションセンター(Villa Miari)のメンバーを中心に開催された国際学会で初めて報告されてから今年で10年目を迎える.この10年間でイタリアでは、行為間比較を臨床における中核的なツールとしながら、多感覚統合、両手動作、両足動作など、毎年異なるテーマで仮説検証のためのプロジェクトが進められ、現在も「行為間比較のリハビリテーションカルテの再考」というテーマでプロジェクトが進行している.本邦においても、2012年に広島で開催された第12回認知神経リハビリテーション学会学術集会において、園田氏より行為間比較についての紹介がなされ、その後、機関誌や各種コースなど様々な媒体でテーマとして取り上げながら、臨床展開の方法についての議論を重ねてきた.しかしながら、その手続きの複雑さや日本とイタリアとの文化の相違、あるいは医療制度の違いなどの様々な要因により、行為間比較の臨床実践にまで至っていないのが本邦における現状である.本講義では、本邦における行為間比較をツールとした臨床展開の方略についてクリニカル・ディスカッションで議論するための話題提供として、行為間比較の構造について理解の鍵となるキーワードを中心に概説する。また、複雑な手続きが必要な“印象”を有する行為間比較の視点を用いた臨床展開をより容易なものための「行為間比較のエッセンス(最も大切な要素)」について紹介する。