11:30 〜 12:00
[CD2-01] 対話の本質を再考する
ー 4症例の病態分析から考える ー
Austin(1962)は,言語によって行為が遂行されるとし,言語行為論を提唱した.言語は行為であり,コミュニケーションは他者とどのように関係性を構築しようかという意図から成り立つ共同行為といえる.
左半球損傷後にみられる失語症は,言語機能のネットワークの破綻により言語の選択や運用に困難をきたし,コミュニケーション行為の障害の要素になり得る.今回,失語症4例(症例A,B,C,D)の病態分析を比較した.症例A,Bの現象は聴覚的理解力の低下,錯語の頻出とジャーゴンといった感覚性失語症を示し,症例C,Dの現象は良好な理解能力,非流暢性の発話といった運動性失語症を示し,各症例の病態の背景は異なることが示唆された.その一方で,いずれの症例もコミュニケーションを成立するために,文脈や環境から振る舞いを選択し,他者との関係性を構築しようと試みる中で,表出することに過剰な努力を要していた.その結果,他者と相互作用するためのネットワークは破綻し,言語は「発話する」ために,なんとかしなければいけないものに置き換わった可能性がある.
セラピストと患者は,臨床場面において社会的認知を基盤とするコミュニケーション行為を一見成立するために,互いに他者へ伝達しやすそうな振る舞いを選択することで「対話」を試みていることはないだろうか.
私たちは環境や他者との関係が変化するあらゆる場面で「わたし」の振る舞いを選択し,他者と双方向的な相互作用を形成し「対話」する.佐藤(2016)は,We-modeを論じる中で共同行為について触れ,自己と他者の行為や結果の予測に基づいて,行為を調節し成立するとしている.セラピストには,他者と相互作用するために「対話する」ことへ導く臨床思考が求められる.4症例の病態分析を通して,共同行為を創発するための「言語」に,どのように働きかけるかについて皆さまと考えることで,対話の本質を再考する機会としたい.
左半球損傷後にみられる失語症は,言語機能のネットワークの破綻により言語の選択や運用に困難をきたし,コミュニケーション行為の障害の要素になり得る.今回,失語症4例(症例A,B,C,D)の病態分析を比較した.症例A,Bの現象は聴覚的理解力の低下,錯語の頻出とジャーゴンといった感覚性失語症を示し,症例C,Dの現象は良好な理解能力,非流暢性の発話といった運動性失語症を示し,各症例の病態の背景は異なることが示唆された.その一方で,いずれの症例もコミュニケーションを成立するために,文脈や環境から振る舞いを選択し,他者との関係性を構築しようと試みる中で,表出することに過剰な努力を要していた.その結果,他者と相互作用するためのネットワークは破綻し,言語は「発話する」ために,なんとかしなければいけないものに置き換わった可能性がある.
セラピストと患者は,臨床場面において社会的認知を基盤とするコミュニケーション行為を一見成立するために,互いに他者へ伝達しやすそうな振る舞いを選択することで「対話」を試みていることはないだろうか.
私たちは環境や他者との関係が変化するあらゆる場面で「わたし」の振る舞いを選択し,他者と双方向的な相互作用を形成し「対話」する.佐藤(2016)は,We-modeを論じる中で共同行為について触れ,自己と他者の行為や結果の予測に基づいて,行為を調節し成立するとしている.セラピストには,他者と相互作用するために「対話する」ことへ導く臨床思考が求められる.4症例の病態分析を通して,共同行為を創発するための「言語」に,どのように働きかけるかについて皆さまと考えることで,対話の本質を再考する機会としたい.