12:00 〜 12:30
[CD2-02] We-modeと左半球障害
ー 自験例を通じて ー
失語症者のコミュニケーションについては、音韻、語彙、統語という言語の形式的側面は障害されるが語用論的能力は比較的保たれるとの見解が一般的である。にもかかわらず、失語症者とのコミュニケーション場面において、インタラクションの低下ともとれる現象に遭遇することは少なくない。以下にいくつかの自験例を挙げる。
1)重度運動性失語患者。質問内容や回答がわからなくても困る様子はなく援助を求めることもない。自発話は「そう、そう」のみであり実用的な表出手段に乏しいが、なんとか伝達しようと試行錯誤する様子はない。
2)重度感覚性失語患者。会話中にわかならいことがあると激しく混乱する。様々な方法で聞き直しても、理解できないことをずっと気にしていて応答できない。また、音韻性錯語に対する自己修正が頻発する。推測した内容をSTが患者に伝えやりとりを続けようとするが、患者は正しい音で表出しようと音韻探索を続けている。
3)重度運動性失語患者。高頻度語は一部呼称可能なものがあるが、会話では喚語をしようとせず、自分の伝達したい内容を常套句やオノマトペ、独特なジェスチャーを用いて表出する。こちらが理解できず様々な方法で内容の確認を行うが、伝達方法を変えることはしない。
これらの現象が生じる背景には、どのようなことが考えられるのだろうか。相馬ら(2009)は、失語症者の語用論的機能は言語機能の障害に影響を受け、実際の会話では具現化していない可能性もあることを指摘している。状況判断が比較的良好であるという理由から失語症者の語用論的能力は保たれていると簡単に判断することはできず、様々な観点から再考の余地があるようだ。
そこで今回は、前述した3例の訓練経過をWe-modeの観点から検討し、失語症者の語用論的能力について考察したい。認知神経リハビリテーションの失語症訓練は、文脈が視覚情報(絵カード)で与えられ、伝達価値の高い情報(テーマとレーマ)を推測しながらセラピストと患者が協同で情報伝達という目的を成功させるものである。残存した機能を活用しコミュニケーション行為を再学習する過程は、失語症者がWe-modeを成立させるために必要な要素やWe-modeの成立が言語の再学習にどのような影響を与えるのかという新しい視点を生み、失語症者における語用論的能力の再考に大きな示唆を与えるものと考える。
1)重度運動性失語患者。質問内容や回答がわからなくても困る様子はなく援助を求めることもない。自発話は「そう、そう」のみであり実用的な表出手段に乏しいが、なんとか伝達しようと試行錯誤する様子はない。
2)重度感覚性失語患者。会話中にわかならいことがあると激しく混乱する。様々な方法で聞き直しても、理解できないことをずっと気にしていて応答できない。また、音韻性錯語に対する自己修正が頻発する。推測した内容をSTが患者に伝えやりとりを続けようとするが、患者は正しい音で表出しようと音韻探索を続けている。
3)重度運動性失語患者。高頻度語は一部呼称可能なものがあるが、会話では喚語をしようとせず、自分の伝達したい内容を常套句やオノマトペ、独特なジェスチャーを用いて表出する。こちらが理解できず様々な方法で内容の確認を行うが、伝達方法を変えることはしない。
これらの現象が生じる背景には、どのようなことが考えられるのだろうか。相馬ら(2009)は、失語症者の語用論的機能は言語機能の障害に影響を受け、実際の会話では具現化していない可能性もあることを指摘している。状況判断が比較的良好であるという理由から失語症者の語用論的能力は保たれていると簡単に判断することはできず、様々な観点から再考の余地があるようだ。
そこで今回は、前述した3例の訓練経過をWe-modeの観点から検討し、失語症者の語用論的能力について考察したい。認知神経リハビリテーションの失語症訓練は、文脈が視覚情報(絵カード)で与えられ、伝達価値の高い情報(テーマとレーマ)を推測しながらセラピストと患者が協同で情報伝達という目的を成功させるものである。残存した機能を活用しコミュニケーション行為を再学習する過程は、失語症者がWe-modeを成立させるために必要な要素やWe-modeの成立が言語の再学習にどのような影響を与えるのかという新しい視点を生み、失語症者における語用論的能力の再考に大きな示唆を与えるものと考える。