Riabilitazione Neurocognitiva 2021

Presentation information

クリニカル・セミナー

ライブ配信 » クリニカル・セミナー

クリニカル・セミナー② -We-modeと臨床展開の可能性-

Sun. Oct 24, 2021 3:40 PM - 5:00 PM 第1会場 (ライブ配信)

座長:沖田 学(愛宕病院)

4:20 PM - 5:00 PM

[CL2-02] 社会性の発達と社会的優位性を利用した介入可能性

*浅野 大喜1 (1. 日本バプテスト病院)

ヒトは生まれながらにして他者への指向性を持ち,周りの社会的刺激に対して非意識的かつ優先的に情報処理されるという社会的優位性をもつことが明らかになってきている.これは,人間が普段の運動や行動において良くも悪くも他者からの影響を受けることを意味する.これまで,他者の影響を多大に受けて行動や態度が学習されるという考えは,Banduraによって提唱された社会的学習理論として知られてきたが,現在ではミラーニューロンの発見や自動模倣などの研究により,身体に根ざした自己と他者の共鳴運動とも言える認知過程以前の低次なレベルで起こる反応にも注意が向けられている.この社会的な刺激に対する反応の根底にあるのは,自己と他者が同じような身体を持ち相互作用するなかで培われた社会的に共有された身体表象であると考えられる.私はこれを“社会的身体表象”と名付け,幼少期から他者との相互模倣を介したやりとり経験を通して獲得されることを論じてきた(浅野, 2012; 2017).このことは,運動機能や行動面において困難を抱える患者の運動能力向上や行動変容のための治療介入を考えるうえで考慮すべき重要な要素であると考えられる.実際,患者にとって他者運動との比較によって起こる自己効力感の低下や他者に介助される生活によって起こる自己能力の認識の不明瞭化などのネガティブな側面,また他者の運動を観察することで得られるフィードバックや運動反応の促進などのポジティブな側面が考えられ,これらの点も評価し治療介入に取り入れていく必要があると考える.
 近年,運動観察トレーニングの有用性が示されてきているが,介入の効果を高めるためにも,患者の目の前にいる二人称的な存在としてのセラピストの役割は,もっと重要視されるべきである.本講演では,患者の身体と共鳴する存在としてのセラピストの役割について考え,皆さんと一緒に議論したい.