第21回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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基礎系

[S1-02] 認知症高齢者における運動技能の長期保持

*平井 達也1、小澤 和馬1 (1. 名春中央病院)

【はじめに】
 アルツハイマー型認知症(AD)は、運動学習が可能であることが示されている(Eslinger, 1986)が、運動技能の長期保持や、認知機能による学習効果の差などは明らかになっていない。本研究の目的は、高齢AD患者の運動技能の保持について長期効果と認知機能による差を検討することである。

【方法】
 対象は、入院中の高齢女性12名(平均年齢83.7歳、MMSE-J:20.6点)で、MCI6名(82.8歳)と中等度AD6名(84.5歳)に分割した。マウスを内蔵したデバイスを対象者の右足部に取り付け、画面に表示された直径5cmの円を「始」の位置から「終」までポインタでなぞるように指示した。運動時間(MTs:秒)とポインタ軌跡の目標線からの逸脱面積(EA:pixels)を算出した。課題は1日5試行、6日間連続の後、1日空けた開始から8日目、さらに7日後の15日目の8日間行った。分析は、対象者要因(MCI、中等度AD)と時系列要因(8水準)の混合要因分散分析を行った(p < 0.05)。

【結果】
 MTs(秒)について、MCI群は、1日目31.5、6日目31.2、8日目35.0、15日目33.5であった。中等度AD群は、1日目59.4、6日目42.0、8日目29.1、15日目27.5であった。対象者要因、時系列要因ともに主効果は有意ではなく、交互作用(F (7, 70)=1.82, p = 0.098)は有意傾向であった。EA(pixels)については、MCI群は、1日目68340、6日目43233、8日目39884、15日目29434であった。中等度AD群は、1日目43142、6日目45858、8日目45292、15日目33933であった。時系列要因(F (7, 70)=2.97, p = 0.009)の主効果のみ有意で、1日目より15日目の方が有意にEAが少なかった。対象者要因の主効果、交互作用は有意でなかった。

【考察】
 本研究の結果は、中等度のADでも、先行研究(Gabrieli, 1993)よりさらに長期の運動技能の保持能力があることを示す。またADは重症度に関わらず、小脳機能も保たれ(木谷, 1984, 川畑, 2002)、本研究のMCIと中等度ADの同等の学習効果は先行研究を支持する。

【倫理的配慮】
 所属法人に研究について承諾を得るとともに、本人および代諾者に同意を得た。