第21回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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[S1-03] 認知機能が低下した後期高齢者に対する足底の知覚課題の難易度設定と有効性

*林 節也1、菅沼 惇一2、牧村 祐希1、千鳥 司浩2 (1. 介護老人保健施設 山県グリーンポート、2. 中部学院大学 看護リハビリテーション学部 理学療法学科)

【はじめに】
 2025年,高齢者人口の5人に1人,約20%が認知症になると推計されている.これは今後認知症症例に対する介入の必要性が示唆されるが,臨床現場においては認知機能が低下した症例に対して,NCRの課題が実施困難なケースが多い.そこで,我々は認知機能が低下している対象者に対して,足底の知覚課題の難易度を調整し,介入したため報告する.

【対象】対象は同意を得た介護老人保健施設に入所中である15名(男性2名,女性13名)とした.平均年齢は87.1±4.2歳,平均要介護認定は2.2,MMSEは平均19.9±4.8点であった.中央値は20点で.中央値以上の対象者10名をA群,中央値未満の対象者5名をB群とした.

【方法と介入】
 事前に立位バランスの評価として立位でFRTを2回測定した.介入課題は座位にて左右の前足部でスポンジの硬度の同時比較課題を実施した.課題難易度は難易度低(硬度1と硬度5),中(2と4),高(3と4)とした.介入期間を3日間とし難易度低から順に各5回計15回実施した.実施中は閉眼を保つことが困難であったため,介入中は前方を注視する様に指示した.また,自尊心に配慮し,正答に対するフィードバックは行わなかった.課題の効果判定として介入直後から2日間連続して立位にてFRTを計測した.立位バランス評価と足底の知覚課題の正当数を,対応のあるt検定で検討した.

【結果】
 A群の正答数は介入後に正当数が向上する傾向を示し,FRTは介入前後で統計的有意差を認め,介入後に増大を示した(p<0.01).B群の正答数及びFRTは介入前後で変化を認めなかった.

【考察】
 今回,MMSEの中央値以上の対象者においては,正答数が向上しFRTの延長を図ることが出来たが,中央値未満の対象者においては変化が認められなかった.介入の難易度設定を段階的に低から高の順に実施したこと,および課題中の注意を前足部に限局化し認知的負荷を下げた介入は認知機能が低下している対象者の介入の一助になりうると考える.