第21回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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神経系(上肢)

[S2-06] 特徴的な身体表象を有する患者の運動主体感の改善を目指した介入
ー コンクリート・プレートからの脱却 ー

*大和 志保1、久高 遼介2 (1. Japan Medical Alliance 座間総合病院、2. 訪問看護ステーション元氣村 あさひ)

【はじめに】
 今回、多感覚統合の変質により運動主体感が低下し、特徴的な身体表象を有する患者に対し視覚フィードバックや体性感覚の細分化を行い身体表象の変質は改善せず、行為間比較を行うも類似が少なく学習の最近接領域とならなかった。これらが、多感覚統合を考慮した両手動作を行う事で改善を認めたので報告する。

【症例紹介】
 発症より1カ月経過した延髄梗塞を認める40代男性。入院時BrsⅡ-Ⅲ-Ⅲ、重度感覚鈍麻2/10、痺れNRS7と灼熱感を認めた。座位は胸腰椎伸展位、左重心偏移し身体外空間へのリーチ困難や右手の動員過多、両肩甲帯の放散反応、原始的スキーマを認めた。身体表象は「右脇腹に分厚いプレートが入っていて動けない」「右肩はコンクリートで固まっている」と運動主体感の低下を認めた。ADLは両手動作の拙劣さあり軽介助、FIMトイレ動作3点、上下更衣3点。なお本発表にあたり症例と家族に書面で同意を得た。

【病態解釈】
 重度感覚鈍麻や痺れが影響し、閉眼での接触情報・空間情報は統合されず運動イメージが低下し、対象物へのリーチや相互作用を行う為の構えが困難となり運動主体感が低下、身体表象の変質や右手の不使用に繋がったと考えた。

【訓練内容及び経過】
 タブレットにて上肢の到達・接近機能と体幹の対称性・垂直性の構築を目的に体性感覚の細分化を図り3週間後、閉眼での右上肢や体幹の空間情報の改善、放散反応や原始的スキーマの軽減、体幹の表象は変化した。しかし右上肢の動員過多と不使用は残存、行為間比較にて更衣やトイレ動作の操作機能に対し、スポンジにて両手の接触課題やその接触面との位置関係の比較を行い4週間後、対象物との相互作用や情報の整合性が得られ、両手動作と上肢の表象が変化した。

【結果】
 入院2か月後BrsⅣ-Ⅴ-Ⅴ、灼熱感や痺れNRS3へ軽減。体幹正中性が得られ行為を予測し、動員過多はなく重心移動や回旋運動、身体外空間へのリーチは改善。FIMトイレ動作7点、上下更衣7点に改善。身体表象は、「プレートは3分割した。思う所へ手が伸ばせることが増えた」「右肩のコンクリートはなくなって、肩甲骨を感じられる」と運動主体感や身体表象が変化した。

【考察】
 多感覚統合を考慮した両手動作を行い、運動の予測と結果の照合がされ必要な感覚情報に注意が向き、運動イメージや身体図式が構築され運動主体感や身体表象の改善に繋がったと考える。