Riabilitazione Neurocognitiva 2021

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一般演題

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神経系(下肢/体幹)

[S3-03] 注意障害により起立動作時に転倒を繰り返していた症例に対する介入

*人見 健一郎1、伊藤 大剛1、市村 幸盛1 (1. 村田病院)

【はじめに】
 認知的負荷がかかると感覚情報の認識ができず、動作時の麻痺側下肢の管理が困難となる症例に対して、身体を介した注意課題を行った結果、管理が可能となり動作の遂行能力が改善したため報告する。

【症例紹介】
 右前頭頭頂葉梗塞を発症した70歳代の男性。発症3ヶ月時点では、BRS下肢Ⅲ-3、表在・深部感覚は軽度鈍麻レベルであったが、消去現象を認めた。高次脳機能障害としてはBITの通常検査では129/146点であった。Fluff testにおいては麻痺側下肢の探索がみられず身体失認を認めた。TMT(A)は座位が143秒、立位が166秒、(B)は座位が236秒であったが、立位では混乱し実施困難であった。歩行は4点杖を使用し見守りレベルであった。起立動作では麻痺側下肢の位置管理ができず転倒を繰り返していた。転倒に対する危機感はあり、どのような準備をすれば転倒に至らないかは言語化できていたものの、実際の動作では麻痺側下肢のモニタリングが困難であった。

【病態解釈と治療仮説】
 起立動作時において、非麻痺側上下肢の運動や、外部情報に注意が向くと注意の分配が困難となり、麻痺側下肢からの感覚フィードバックが認識できず転倒に至ると考えた。これに対して、認知的負荷を考慮したうえで身体を介した注意課題を段階づけて実施した。方法としては、端座位にて非麻痺側下肢、麻痺側下肢の順に前後左右への他動運動を行い、どの方向に動いたか問う課題を行った。この認識が可能となったら左右同時運動で行い注意の分配を図った。さらに非麻痺側下肢は自動運動とし、最終的には起立直前に麻痺側下肢を動かし運動方向を問うという段階づけで行った。

【結果】
 Fluff testにおいては足部以外の麻痺側下肢の探索が可能となった。TMT(A)は座位が125秒、立位が136秒、(B)は座位が232秒、立位が302秒と実施が可能となった。起立動作では10回中6回は事前の足部の位置管理ができ転倒が予防できた。

【考察】
 動作時の麻痺側下肢の管理が困難な症例に対し、左右下肢への注意の分配を段階的に促したことで、麻痺側下肢の感覚情報に注意を分配できるようになり、起立動作時の転倒回数軽減に繋がったと考えられる。

【倫理的配慮・説明と同意】
 本発表は、ヘルシンキ宣言に基づき、対象者には本発表の目的について説明し、同意を得た後に実施した。