第21回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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神経系(下肢/体幹)

[S3-07] 片麻痺患者の立位の非対称性に対して損傷前行為のイメージを活用した介入の試み

*下手 大生1、赤口 諒1、奥埜 博之1 (1. 医療法人孟仁会摂南総合病院リハビリテーション科 )

【はじめに】
 脳卒中患者の立位姿勢の非対称性は日常生活の様々な動作に影響を与える.今回主に下肢機能の問題で,非対称的な立位姿勢を呈していた脳卒中患者に対し,損傷前イメージを活用した介入を行ったことで,良好な結果が得られたため報告する.

【症例】
 右橋梗塞発症後58日目の70歳代男性.FMAの下肢運動機能は15点で主に股関節に麻痺症状を認めた.感覚機能は軽度鈍麻.立位時には「左はふらつくから右で踏ん張っている」と経験しており,非麻痺側優位の立位を認めた.麻痺側への荷重を求めると骨盤は水平位を保てずに左回旋や体幹の左側屈と非麻痺側の過剰努力が観察された.安静時立位の重心動揺計(BASYS,テック技販社製)の結果は,足圧中心(COP)左右位置は右偏位3.6㎝,総軌跡長94.1㎝であった.立位時の麻痺側下肢について,股関節は軽度屈曲・外旋位,足関節は軽度内反位を正中位と誤認していた.この点について,五目板を用いた評価を試みた結果,股関節と足関節の空間情報に注意が向かず足底の接触情報をもとに認識していた.

【病態解釈】
 麻痺側下肢の運動機能の低下や下肢のアライメントの誤認により,立位時に麻痺側荷重に必要な下肢の体性感覚の予測や準備が出来なかった.その結果,骨盤の水平性を保てず,非麻痺側の過剰努力が生じて,非対称な立位姿勢になっていると考えた.

【介入および経過】
 五目板を用いて股関節の方向と足底圧を関係付けるための課題を実施した.必要な体性感覚を予測出来るように,損傷前行為のイメージとして野球の打者のスタンスを活用した.さらに,麻痺側荷重時の股関節の方向に伴う足底圧の変化を問う課題を自動介助下にて実施し,予測と結果の照合を求めた.介入は30分/回を10日間実施した.介入後のFMAは20点に向上し,COP左右位置は右偏位1.7㎝,総軌跡長75.1㎝に改善した.また,立位の股関節外旋位と足関節内反位は不十分ながら改善し,非麻痺側の過剰努力は軽減した.

【考察】
 非対称な立位を呈した脳卒中患者に対し,損傷前行為のイメージを活用することで,麻痺側下肢のアライメントの誤認を自覚することが可能となった.つまり,損傷前行為と現在の行為の比較によって,非対称な立位を認識し,麻痺側荷重に必要な体性感覚の予測が可能となったと考える.

【倫理的配慮、説明と同意】
 発表に関して,説明を行い,同意を得た上で実施している.