Riabilitazione Neurocognitiva 2021

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神経系(下肢/体幹)

[S3-12] 機能性神経障害(FND)を合併した慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)例に対する模倣学習の試み

*森 武志1、菊地 豊1、一場 弘行1、古井 啓2、美原 盤2 (1. 公益財団法人脳血管研究所 附属美原記念病院 神経難病リハビリテーション課 、2. 同 脳神経内科)

【はじめに】
 パラ陸上選手を分析対象とした模倣学習により歩行改善を認めたFNDを合併したCIDP例を経験したので報告する。

【症例】
 CIDP発症後2年が経過した30代男性。外来開始時、筋力は足関節背屈筋MMT1でその他がMMT2レベル、感覚は股関節の表在、深部感覚は残存し、膝と足部の表在、深部感覚脱失、握力は左右5㎏、座位は10分で介助を要した。神経伝導検査は正中神経、尺骨神経は正常、腓骨神経と脛骨神経は運動と感覚の導出困難で、小趾球に僅かな筋萎縮と凹足を認めた。歩行はT字杖自立も10m程度でhuffing and puffing sign(HPS)を示し、CIDP患者の歩様とは異なり、両側ぶん回しと足部引きずり歩行を呈していた。

【経過】
 外来開始時、10m歩行(10MWT)は18.7秒、6分間歩行(6MD)は140mだった。動作分析課題で1)異なる歩行相の写真を提示し下肢の位置関係の相違を回答、2)写真と患者の歩行の類似点と相違点を列挙する課題、模倣課題で3)写真の歩行を模倣、4)療法士の歩行模倣を実施した。1)〜3)は健常者の写真を用い、訓練は1)〜4)の順に実施した。動作分析は可能だが、3)では一貫性のない動作とgive-way weaknessを示し、4)では3)に加えexcessive slowness(ES)の増悪がみられた。動作分析課題と模倣課題を実施後に「パラ陸上の短距離選手が模倣しやすい」とあり、以降はパラ陸上選手を対象に訓練を実施した。パラ陸上選手に変更した模倣課題はHPSを認めず、ES軽減と動作の円滑性向上を認めた。介入6ヶ月後で握力は右14kg、左15kg、10MWTが6.4秒、6MDが420mに改善し、パラ陸上大会に出場する目標設定や自主訓練に取り組む行動変容がみられた。

【考察】
 本例は模倣課題の対象により反応が異なり、パラ陸上選手の模倣で歩行のESの軽減を示した。模倣に影響を及ぼす要因として対象への共感が報告(Mullr B,et al.2013)されている。本例のパラ陸上選手を目指そうとする行動変容は、分析対象への共感を示す行動と解釈され、模倣課題の動作学習を促進する一因と考えられた。FND合併例の模倣学習では、模倣対象の共感を考慮した訓練課題設定が有用と思われた。

【倫理的配慮】
 本報告にあたり脳血管研究所個人情報保護規定に則り説明の上署名による同意を得た。