Riabilitazione Neurocognitiva 2021

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神経系(その他)

[S4-03] 書字時の視覚情報の有無が小字症のあるパーキンソン病患者の主観的経験に及ぼす影響

*三上 恭平1、濱田 裕幸2 (1. 登戸内科・脳神経クリニック リハビリテーション科、2. 東京大学大学院 工学系研究科)

【はじめに】
 パーキンソン病(PD)患者の小字症は、意思に反して字が小さくなる症状である。我々は小字症のあるPD患者に開眼および閉眼での書字評価を行った結果、書字時の視覚情報の有無が患者の主観に及ぼす影響について興味深い結果を得た。

【方法】
 PDと診断され、小字症に関する主訴があった3名の患者が対象となった。書字は開眼(OE)および閉眼条件(CE)の2条件で行い、Kannoら(2020)の方法を参考に、縦7.2mm×横8.0㎜の「ま」が7文字連続的に記載されている例示文字を提示した。OEでは、例示文字の下に例示文字と同様の大きさで連続的に記載するように指示した。CEでは閉眼前に例示文字を提示し、閉眼した状態で同じ大きさで連続的に記載するように指示した。書字には2Bの鉛筆を使用し、例示文字はA4の用紙の中央に印刷して使用した。評価方法は、Image Jを用いて縦横の大きさを0.1㎜単位で計測し、10字目の文字と例示文字の比率をデータとして用いた。書字直後に、書かれた文字の大きさについて質問し、内省を評価した。

【結果】
 例示文字に対する書字文字の比率は,症例1はOEが縦45.5%、横52.8%でCEは縦27.3%、横35.2%であった。症例2はOEが縦63.2%、横52.9%でCEは縦78.9%、横47.1%であった。症例3はOEが縦66.7%、横42.1%でCEは縦66.7%、横52.6%であった。OEの内省は3例ともに例示文字よりも小さくなってしまうと報告したが、CEの内省は、1例が例示文字よりも小さくなってしまう、1例が例示文字と同じくらい大きく書けた、1例が例示文字の1.5倍くらい大きく書けたであり、3例中2例が小字になっていることを自覚していなかった。

【考察】
 書字文字の大きさは3例共に、視覚の有無に関係なく小字症の現象が観察された。一方、書字時の内省は視覚情報の有無により異なっていた。PD患者の小字症には、運動関連領野である前補足運動野や帯状皮質運動野、視空間領域である上後頭回などの機能不全が関与していると報告されているが、書字時の体性感覚情報をオンラインでモニタリングする機能の不全や体性感覚に基づく視覚イメージの異常も背景病態として存在していると考えられた。

【倫理的配慮、説明と同意】
 本発表は対象症例に同意を得ており、情報の使用には個人が特定できないように配慮した。