Riabilitazione Neurocognitiva 2021

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高次脳機能障害

[S5-07] 能動的注意の改善により左身体無視が軽減した症例

*加藤 大策1、中里 瑠美子1 (1. 東京女子医科大学東医療センター)

【はじめに】
 今回,右中大脳動脈閉塞により左片麻痺と重度の左身体無視を呈した症例に対して左身体への注意が改善することで無視症状が軽減した経過を報告する.

【症例紹介】
 症例は脳梗塞を発症し口頭で発表の同意を得た50歳台の男性である.発症1週目の左側のBR-stage上肢 III・手指Iでわずかに随意運動が可能なものの他者からの促しを必要とした.感覚は表在・深部ともに重度鈍麻で接触及び運動の有無を認識できず,母指探しでは左上肢を右空間で探索する状態だった.左上肢の運動に対して自動介助運動で動かしても「操られている感じ」との記述を認めたが,注意を向けることで自分の身体であると感じることができた.認知機能としてMMSEが26点と著明な低下は見られなかった.線分抹消試験は33/36と左側を見落とした.また,課題に注意を向け取り組めたが,注意を分配することが難しかった.ADLで食事は見落とさなかったが左手が手洗いに参加しないなどの無視症状を認めた.

【病態解釈および介入方法】
 左身体無視が根底にあることで左身体を認識することができず,左片麻痺や感覚障害をより強めている状態と考えた.症例は意識することで自身の身体を認識できることから,まずは左身体に対する能動的注意が向上することで身体無視が軽減するのではないかと考えた.課題は遮蔽下で左上肢の運動や表面性状を予測し実際の運動や感覚情報との比較照合をすることで運動学習を促すように介入した.

【結果】
 発症4週目の感覚は表在・深部ともに中等度鈍麻で接触及び運動の有無を認識できるようになり,母指探しで誤差があるものの左母指に触れることができるようになった.また,他者からの促しがなくても左上肢の随意運動が可能になった.左上肢の運動に対して「動かせているのはわかる」と記述の変化を認めた.線分抹消試験は36/36と改善した.ADLでは手洗い時に左上肢が参加できるようになったが一部の無視症状は残存した.左側のBR-stageは上肢III-IVで手指IIIへとなった.

【考察】
 今回,左身体に対する能動性注意が向上したことで一部行為での無視症状の改善を認めた.しかし,病棟における無視症状などは残存した.これは,能動的注意を利用した代償戦略が可能になった一方で,受動的注意が停滞していることに起因すると考えた.今後は受動性注意への介入方法を検討し取り入れる必要がある.