Riabilitazione Neurocognitiva 2021

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一般演題

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小児

[S6-03] 運動の開始-停止に注意を向けて運動イメージを活用した課題により身体イメージが改善した一例
ー 押え手として使用する左手の実用性の改善に向けた治療介入に関して ー

*髙橋 秀和1、木村 正剛1 (1. 北海道こども発達研究センター)

【はじめに】
 押さえ手として使用する左手に伴う異常な放散反応の制御を目的に,開始-停止に注意を向けて運動イメージの構築を図る課題を実施し,特異的病理の部分的制御と身体イメージの改善を認めた一例について報告する.

【症例紹介】
 発症から8ヵ月経過した脳梗塞左片麻痺を呈す10歳代前半の男児.BRS上肢Ⅳ手指Ⅲ下肢Ⅴ,感覚は10点法にて肩〜肘4/10,前腕2/10, 手指1/10と表在・深部共に中等度〜重度鈍麻.閉眼では「全くわからない」と記述し前腕〜手指の身体イメージの不鮮明さを認めた.自ら左手を机上に置き,右手で左手の形を整えることは可能だが自身の体動や手先での固定を意識すると手指・手関節が屈曲位となり異常な放散反応を認めた.評価訓練では注意の持続性が乏しく,閉眼では眠気を訴え,開始-停止に注意が向かず解答を誤る様子や運動イメージの構築想起に困難さを認めた.

【病態解釈】
 発症後の知覚経験が求心性情報の減少に影響し身体イメージの変質や特異的病理を出現させ,誤った運動イメージの構築想起へと悪循環を及ぼしている.認知過程における注意の問題は,各イメージの改変に必要な情報を焦点化させることを困難にしていると解釈した.

【治療介入】
 ポンテを使用した前腕〜手掌の空間課題を第一段階で実施.患児の手は道具には触れさせず運動覚にのみ注意を向け,前腕〜手掌の傾きの識別を要求した.患児には停止位置に達した時点で声かけを求め,事前に記憶した停止位置の位置覚と他動運動に伴う運動覚の比較を行うよう介入.その後,机に触れる接触面の変化を知覚仮説に加え,運動覚と触圧覚の関係性の構築を図った.

【結果・考察】
 BRS上肢Ⅴ手指Ⅲ下肢Ⅴ,肩〜肘7/10,前腕5/10,手指2/10と表在・深部共に中等度〜重度鈍麻.閉眼では「頑張らなくてもわかる」と記述し身体イメージの不鮮明さは軽減し,課題中の情報選択や運動イメージの構築想起までの時間が短縮した.異常な放散反応は自身の体動では出現せず,押さえ手としての使用が可能になった.課題設定のなかで,セラピストが注意をガイドしたことで,情報が焦点化され,より適切な運動イメージを想起する経験が,求心性情報の増加と情報の統合に影響を及ぼし身体イメージの改善に繋がったと考える.

【倫理的配慮,説明と同意】
 発表に際し所属法人の承認を得て,プライバシーの保護について説明し同意を得た.