Riabilitazione Neurocognitiva 2021

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整形外科疾患

[S7-02] 腰部脊柱管狭窄症に起因する感覚障害によりバランス能力低下
を呈した症例

*井上 聡1、沖田 学1 (1. 愛宕病院)

【はじめに】
 腰部脊柱管狭窄症術後の足部のしびれは消失しづらい(原田,2005)ために足部の治療戦略は重要である。足部の素材識別や位置覚認識が困難であった症例に対して、足部に対して体性感覚の認識を準拠とした認知運動課題を行いバランス能力に改善を認めたため報告する。

【症例紹介】
 本症例は腰部脊柱管狭窄症と診断され後方除圧術(Laminoplasty L3/4/5/S)を施行された60歳台女性である。術前は両下肢にしびれと疼痛があり歩行時に足尖のつまずきを認めていた。術後7日目には疼痛はほぼ消失するが右足部と左下腿~足部にかけてしびれと感覚障害は残存した。足関節深部感覚は左右とも低下しており、足底の素材識別課題では、右はほぼ正確に識別可能であったが左は「違いがわからない」状態であった。フリーハンド歩行は自立していたが片脚立位保持は困難であり「左足はふらつく」「足の裏はしびれてバランスがとりにくい」と内省があった。重心動揺計評価では総軌跡長や外周面積において開眼・閉眼条件ともに健常人と比較して異常値を示した。

【病態解釈】
 症例は約1年前より、足部感覚障害のため足部や足底の体性感覚に注意を向けることなく行為をしていた。つまり、適応的な足関節姿勢制御が困難でバランス能力が低下している状態であった。

【認知運動課題と経過】
 足底に対して3種類の素材を踵と前足部に別々に敷き識別課題を実施した。足底感覚に注意を向けた後に、不安定板を用いて傾きや筋収縮感覚に注意を向けながら立位姿勢制御課題を実施した。その際に、鏡による視覚的フィードバックも併用した。課題開始7日目の評価では、足関節深部感覚の正答率が向上し足底での素材識別が右は100%、左でも50%程度正答可能となった。片脚立位保持が右は約6秒間、左は約4秒間可能となった。重心動揺計評価では、開眼・閉眼条件ともに総軌跡長と外周面積が減少した。特に開眼時の重心動揺に改善が見られた。「地面を少しつかめるようになった」「足の裏の感覚が少しわかるようになった」と内省が聞かれた。

【考察】
 腰部脊柱管狭窄症術後にしびれ・感覚障害が残存する症例に対して、足底に対する認知運動課題と視覚などの感覚を用いた姿勢制御課題を併用して行うことが姿勢制御能力向上のために重要であった。

【倫理的配慮】
 発表について説明して同意を得た。また、個人情報に注意して匿名性を遵守した。