Riabilitazione Neurocognitiva 2021

Presentation information

一般演題

オンデマンド配信 » 口述発表

整形外科疾患

[S7-03] 起立動作時に疼痛を有するTKA術後症例への介入経験
ー 重心の前方移動に着目して ー

*池田 勇太1、赤口 諒1、奥埜 博之1 (1. 医療法人孟仁会 摂南総合病院 リハビリテーション科)

【はじめに】
 人工膝関節置換術(TKA)後の下肢筋力は活動に直接影響するが、疼痛は精神的健康を介して活動に影響する。今回、起立動作時の疼痛が屋外活動に影響を与えていた症例に対し、重心の前方移動の誤認に着目した病態解釈と介入を行い、良好な結果を得たので報告する。

【症例】
 症例は右TKAから5ヶ月経過した70歳代女性で、自宅退院後に訪問リハビリテーションを開始した。関節可動域は右膝関節屈曲100°、伸展-10°、MMTは腸腰筋5、大腿四頭筋4、中殿筋3であった。CS-30は8回、短縮版BBSは21点で下肢・バランス機能低下を認めていた。FIMは運動項目85点であったが、FAIは16点であった。起立動作時に右下腿後面に疼痛NRS3があり、「立つときに痛いから動きたくない」と訴えていた。疼痛評価はTSK-11verは31点、PCSは31点であり、運動恐怖感・破局的思考は高値を示していた。座位姿勢は骨盤後傾位で、股関節屈曲を伴う重心の前方移動に強い恐怖感があり、股関節の屈曲運動を過大に認識していた。起立動作は重心の前方移動が乏しく、骨盤は左回旋し左荷重が優位となり、上肢での代償もみられた。

【病態解釈】
 股関節屈曲角度を過大に認識することによる前方への恐怖感が、起立動作時の下腿三頭筋の過剰出力や重心移動の不十分さの一因になっている可能性が考えられた。その結果、下腿後面の疼痛を増悪させ活動意欲が低下する悪循環に陥っていると考えた。

【介入と経過】
 股関節屈曲角度とそれに伴う骨盤の前傾と足部への圧移動を関連付ける課題を週1回の計4回実施した。その結果、起立動作時の下腿後面の疼痛は消失し、TSK-11verは22点に改善した。CS-30は11回、短縮版BBSは22点、FAIは24点に改善し、屋外活動が可能となった。

【考察】
 起立動作時の重心の前方移動が不十分となるケースでは、疼痛と恐怖感が一因となって重心移動を過大に認識している可能性があり、どの身体部位の情報構築の問題による誤認なのかを把握することの重要性が示唆された。今後は重心移動の誤認に関して、さまざまな疾患や行為、実際の生活との関連についての検証を進めていきたい。

【倫理的配慮、説明と同意】
 症例に本発表の趣旨と内容に関して詳細な説明を行い、同意を得ている。