Riabilitazione Neurocognitiva 2021

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整形外科疾患

[S7-04] 恐怖感から独歩獲得が困難な圧迫骨折症例に対する介入報告

*坂本 隆徳1、赤口 諒1、指宿 加奈子1、奥埜 博之1 (1. 医療法人孟人会 摂南総合病院 リハビリテーション科)

【はじめに】
 恐怖感により独歩が困難な患者は臨床上多く経験する.今回,視覚的な恐怖感を訴え,歩行補助具に依存的な圧迫骨折症例に対して,足部の体性感覚情報に着目した介入により独歩自立を獲得した経過を報告する.

【症例】
 Th12圧迫骨折を受傷した80歳代女性.受傷前から緑内障により右優位に視野狭窄を認め,視野角は右18.6°左33.0°であった.TUG(独歩)26.1秒であり,歩行中は頸部を固定する様子が観察された.MiniBESTestの頸部水平回旋歩行は0点であった.重心動揺計(BASYS,テック技販社製)を用いた30秒間立位のCOPの結果は95%信頼楕円面積:2.7㎠,移動速度:4.0㎝/s.周波数解析(LF/HF):0.39であった.ADLは「目が見えないから怖い」という経験のため,歩行補助具に依存的であり日中は杖歩行,夜間は歩行器を使用していた.足部での単軸不安定板を用いた評価では,踵部の体性感覚情報に注意が向きやすく,水平位で「踵が上がっている」と記述し,水平位の認識が困難であった.

【病態解釈】
 外部観察や体性感覚情報の評価から,足部の体性感覚情報を基にした歩行の安定性の確保が困難であることが考えられた.また,視野障害および頸部固定により視覚代償が不十分であるため恐怖心が強く,歩行では歩行補助具に依存的になっているものと考えた.

【介入と経過】
 単軸不安定板を用いて,足関節深部感覚から前足部と踵部の位置関係を識別する課題を15分/回を週に3回,合計3週間実施し,水平位の認識は改善した.加えて歩行時の恐怖感は消失し,昼夜ともに独歩自立を獲得した.TUG(独歩)は10.8秒,MiniBESTestは頸部水平回旋歩行2点となった.COPの結果は,95%信頼楕円面積:3.8㎠,移動速度:2.7㎝/s.LF/HF:3.1を示した.

【考察】
 本症例のように視覚的な恐怖感と姿勢制御に問題を抱えている症例においては,足部の体性感覚情報に関する評価が重要である可能性が示唆された.また,重心動揺計測の結果から足関節周囲筋の共収縮が改善し,歩行能力の向上に寄与した可能性が考えられる.今後は客観的な姿勢分析や筋電図を用いた分析を進めていきたい.

【倫理的配慮】
 発表に先立ち,症例に本発表の趣旨と内容に関して同意を得ている.