Riabilitazione Neurocognitiva 2021

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整形外科疾患

[S7-06] 足底での触覚識別課題により肩痛が改善した人工股関節全置換術後症例

*高石 翔1、小坂 則之1、濱田 彩1、川田 高士1 (1. 川田整形外科)

【はじめに】
 変形性股関節症患者は,足圧内側偏位・体幹側方傾斜させて姿勢制御しており,人工股関節全置換術(THA)後にも,体幹マルアライメントの残存する症例が報告されている(安部ら2004,神谷ら2013).体幹マルアライメントは肩甲骨運動に関与し(Nagaiら2013),肩痛の要因となりうることから(Ludewigら2000),THA後に肩痛が生じる可能性がある.
 THA後患者の姿勢制御は,足底刺激により変化すると報告されており(小松ら2013),足底への触覚課題により姿勢制御が変化し,肩関節運動に影響しうる.今回,足底への触覚識別課題により肩痛が改善したTHA例を経験した.

【症例】
 右変形性肩関節症と診断された70代の女性であり,1年前に右THAの既往があった. 3年程前から右上肢挙上時痛があったが,1年前から徐々に増悪し,強度はNumerical Rating Scale(NRS)で4だった.座位での外部観察では,右肩甲骨下方回旋位,体幹左回旋位,骨盤左側方偏位,右股関節内転・内旋位であった.内省では「足が内向いちょって,右に傾いちゅうって言われたけど,自分ではわからん」「右(殿部)の骨に体重がかからん」と記述し,足圧の認識はできたが,空間情報と殿部圧情報の構築が困難であった.右肩痛は右踵外側部への触覚刺激により改善した.

【病態解釈と治療】
 右THAにより下肢支持機能や体幹対称機能が障害された結果,肩甲骨カウンター・バランス機能に過負荷がかかり,右肩痛が生じていると推測した.肩痛は右踵外側部の触覚刺激により軽減し,足圧は認識できたため,足底の接触情報に基づき下肢・体幹の空間情報を学習することで,右肩痛を改善できると仮説を立てた.治療介入として,毛足の異なる素材を足底で識別させる課題を適用し,症例の行為を治療前後で比較させた.

【結果】
 治療後には右肩屈曲運動時痛NRSで0となり,「今は痛くない」「全体に(体重がかかる)」「(右殿部の)骨はわかる」と記述した.右肩屈曲可動域は,治療前115°から治療後125°となった.

【考察】
 足底の接触情報に基づき下肢・体幹の空間情報を学習することで,上肢到達機能への負荷が軽減され,右肩痛が改善した可能性が示唆された.

【説明と同意】
 研究目的を対象者に説明し,同意書を作成した.データは個人が特定できないよう配慮した.