第21回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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特別講演1

2021年10月24日(日) 10:20 〜 11:20 第1会場 (ライブ配信)

座長:信迫 悟志(畿央大学)

10:20 〜 11:20

[SL1-01] We-mode認知の脳メカニズム

*嶋田 総太郎1 (1. 明治大学)

日常生活において,われわれは他者とさまざまな共同行為を行っている.このような共同行為がうまくいっているとき,たとえば友人との会話が弾んでいるときや,スポーツや音楽演奏などチーム作業がうまく進んでいるとき,全員が一つの目標に向かって集中しているときなどには,自己と他者の区別が曖昧になるような,個々の個体には還元できない「われわれ感=we-mode」と呼べるような認知モードに包まれる.一方で,we-modeは他者との共同行為においていつでも得られるわけではなく,また一度得られたとしてもそれが定常的に続くわけでもない.We-modeの認知神経基盤を明らかにすることは,認知神経科学的に重要なだけでなく,社会学的にも応用可能性が高い重要課題であるといえる.We-modeは複数の個体間に起こる現象であるので,we-mode中の個人の脳を調べるだけでなく,むしろ2人以上の脳活動においてどのような相互作用が見られるのかのダイナミクスを調べることが有益であると考えられる.これまでに2者の脳活動を同時計測(ハイパースキャニング)するいくつかの先駆的な研究が行われており,インタラクションを行っている2者の脳活動に同期・機能結合現象が見られることが報告されている.講演者らも,プレイヤーと応援者や,協調課題中の2者に脳間機能結合が見られることを報告している.しかしながら,その研究の数は全体としてはまだ少なく,体系的に実験が行われているとはいえない.その結果,脳間機能結合が起こることはわかっているものの,それがどのような条件のときにどの脳部位に生起するのか,脳間機能結合は共同行為におけるどのような心理的・行動的現象と関連しているのか,といったことは不明な点も多い.さらに3人以上の「場」における脳間機能結合についてはほとんど調べられていないのが現状である.本講演では,社会性認知に関わる脳領野であるミラーニューロンシステムとメンタライジングシステムについての簡単に説明した後,近年のハイパースキャニング研究の成果について紹介する.We-mode認知は,従来の認知脳科学における「個人」の脳機能の理解という研究パラダイムからの大きな転換を意味しており,複数人の脳活動の「間」にある情報を解析する技術の開発を必要としている.We-mode認知は常に安定して存在するわけではなく,むしろある瞬間にふっと湧き上がるようなダイナミックな特徴を持つと考えられる.このような複数の脳活動の関係性のダイナミクスを可視化することで,we-mode認知の特性を明らかにしていくことができるといえる.

※本研究は,JSPS科研費20H04057, 21H03785および JSTムーンショット型研究開発事業JPMJMS2013の助成を受けたものです.