13:50 〜 14:20
[CPR-03] 「発話する」ことから「振る舞いの選択」に向けて- 対話することの本質を探究した臨床推論 -
コミュニケーションは,産出される個々の情報を捉えるのではなく,文脈や経験から全体を瞬時に解読し,振る舞いを選択して産出することで他者と新しい状態を創発する行為である.また,意図せず他者と相互に影響を与え合う同調的な文脈や経験に即した文脈によって振る舞いを応用する.
日々の臨床経験から高次脳機能障害を有する患者とのコミュニケーションを紐解くと,セラピストには患者が志向性を「発話する」ことではなく,「対話する」ことに向ける視点が求められる.そこで,社会性認知の視点から情報の解読に加え,コミュニケーションとして振る舞いを産出するリハビリテーションの必要性を提案する.
症例は広範な脳梗塞により重度失語症を呈した70歳代男性である.単語レベルからの聴覚的理解力の低下を認めたが,視覚的な状況判断は可能であった.日常生活では,状況判断といった同調的な文脈に即した応答は可能であった.一方,会話といった経験に即した文脈では症例は発話することで応答を試み,同語反復や同じジェスチャーを繰り返し,振る舞いの応用が困難であった.同調的な文脈から他者の振る舞いの影響を過剰に受け,経験に即して「発話する」ことでなんとかコミュニケーションを成立させようとしていた.そこで,同調的な文脈の形成から,「振る舞いの選択」に向けて評価・介入をおこなった.結果,文脈に一致して表情やジェスチャー,発語を選択し,振る舞いを応用したコミュニケーションが可能となった.
板倉(2016)はwe-mode認知の観点から,互いの社会性認知の潜在性を拡張することで学習可能性を高めることを述べている.自律した志向性から多様なコミュニケーションを可能とするためには,同調的な文脈や経験に即した文脈の形成といった双方の視点から振る舞いを選択し産出できることが重要ではないだろうか.
今回,セラピストの臨床推論と症例の志向性の変化からコミュニケーション行為の構築に至った過程を提示し,「振る舞いの選択」について考えることで「対話する」ことの本質を探究する機会としたい.
日々の臨床経験から高次脳機能障害を有する患者とのコミュニケーションを紐解くと,セラピストには患者が志向性を「発話する」ことではなく,「対話する」ことに向ける視点が求められる.そこで,社会性認知の視点から情報の解読に加え,コミュニケーションとして振る舞いを産出するリハビリテーションの必要性を提案する.
症例は広範な脳梗塞により重度失語症を呈した70歳代男性である.単語レベルからの聴覚的理解力の低下を認めたが,視覚的な状況判断は可能であった.日常生活では,状況判断といった同調的な文脈に即した応答は可能であった.一方,会話といった経験に即した文脈では症例は発話することで応答を試み,同語反復や同じジェスチャーを繰り返し,振る舞いの応用が困難であった.同調的な文脈から他者の振る舞いの影響を過剰に受け,経験に即して「発話する」ことでなんとかコミュニケーションを成立させようとしていた.そこで,同調的な文脈の形成から,「振る舞いの選択」に向けて評価・介入をおこなった.結果,文脈に一致して表情やジェスチャー,発語を選択し,振る舞いを応用したコミュニケーションが可能となった.
板倉(2016)はwe-mode認知の観点から,互いの社会性認知の潜在性を拡張することで学習可能性を高めることを述べている.自律した志向性から多様なコミュニケーションを可能とするためには,同調的な文脈や経験に即した文脈の形成といった双方の視点から振る舞いを選択し産出できることが重要ではないだろうか.
今回,セラピストの臨床推論と症例の志向性の変化からコミュニケーション行為の構築に至った過程を提示し,「振る舞いの選択」について考えることで「対話する」ことの本質を探究する機会としたい.