3:30 PM - 4:00 PM
[CPR-06] 末期がん患者の身体表象の再構築にむけた介入の一考察- 抗がん剤の副作用で感覚異常を呈する症例を通して -
抗がん剤の副作用で起こる末梢神経障害は患者の日常生活に支障を来すだけでなく,Quality of Lifeを低下させる要因となる.今回,抗がん剤の副作用により末梢神経障害が出現し,自分の足部を「丸く蝋を塗ったように滑りやすい足」と感じるようになり,日常生活に支障を来していた症例を担当し,身体表象の改善や言語記述の変化等を図ることができた経験を報告する.
症例は60代の女性で2017年に末期の乳がんの診断を受け,同年から抗がん剤治療が開始された.治療でカドサイラを使用してから足の裏全体が丸く,蝋を塗ったように滑りやすく感じるようになった.このことに加え,医療従事者から骨折のリスクを指摘され,歩くことに不安を感じるようになり,介入開始時は伝い歩きでなければ歩行できない状態であった.
介入初期は歩くことに不安感を感じていたため,座位で足の裏を感じることを宿題として提示することから開始した.当初丸かった足は,座位で踵を感じられるようになると,徐々に丸く感じる部位も縮小し,不安感も減少してきた.その後,足部に対する接触課題など訓練を行い,足の裏の丸い感覚は前足部のみまで縮小し,「近くの店まで歩いていってみたい」との発言も見られた.
現在でも抗がん剤治療は継続しており,治療直後は症状が出現するが,以前のような状態低下はなく,独歩で近隣の店舗まで外出できるようになった.今後は自動車の運転がしたいという目標をもっている.
本症例の丸く滑りやすい足と感じる症状は抗がん剤の治療後に強くなることから,抗がん剤の影響が大きいと考える.自分の足ではなくなり,感覚情報を適切に処理することができなかったが,介入を通して患者自身の身体への気付きが生まれたことが,身体表象等の改善につながったと考える.
本報告では,がん患者に対する認知神経リハビリテーションの可能性に関して議論する機会としたい.
症例は60代の女性で2017年に末期の乳がんの診断を受け,同年から抗がん剤治療が開始された.治療でカドサイラを使用してから足の裏全体が丸く,蝋を塗ったように滑りやすく感じるようになった.このことに加え,医療従事者から骨折のリスクを指摘され,歩くことに不安を感じるようになり,介入開始時は伝い歩きでなければ歩行できない状態であった.
介入初期は歩くことに不安感を感じていたため,座位で足の裏を感じることを宿題として提示することから開始した.当初丸かった足は,座位で踵を感じられるようになると,徐々に丸く感じる部位も縮小し,不安感も減少してきた.その後,足部に対する接触課題など訓練を行い,足の裏の丸い感覚は前足部のみまで縮小し,「近くの店まで歩いていってみたい」との発言も見られた.
現在でも抗がん剤治療は継続しており,治療直後は症状が出現するが,以前のような状態低下はなく,独歩で近隣の店舗まで外出できるようになった.今後は自動車の運転がしたいという目標をもっている.
本症例の丸く滑りやすい足と感じる症状は抗がん剤の治療後に強くなることから,抗がん剤の影響が大きいと考える.自分の足ではなくなり,感覚情報を適切に処理することができなかったが,介入を通して患者自身の身体への気付きが生まれたことが,身体表象等の改善につながったと考える.
本報告では,がん患者に対する認知神経リハビリテーションの可能性に関して議論する機会としたい.