Riabilitazione Neurocognitiva 2022

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一般演題

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[S3] 神経系(下肢/体幹)

[S3-01] 消去現象を呈し体幹右傾が顕著な在宅者に,両足動作の情報構築が歩行時の体幹制御に有効であった一症例

*竹中 準1、舘道 芳博1、中木村 繁1 (1. 医療法人社団 秀和会 ファミリークリニックこころ)

【はじめに】左側の消去現象を呈し体幹右傾の歩行で転倒を繰り返す90歳代女性の訪問リハを経験した.消去現象は注意の関与が報告され(伊藤ら,1995),両足接地した空間課題にて左右に注意を促し両足の情報構築により,歩行時の体幹の傾き制御に効果を認めたので報告する.
【症例】脳梗塞により左片麻痺とパーキンソン症候群を呈する90歳代女性,発症後13年経過しBr.stage全てⅤ,左側の表在・深部覚軽度鈍麻だが「両足つくと左足裏の感覚がなくなる」と記述し,左右同時の足底接触で左側を消去(0/10),左右同時の股関節運動で左側の距離の認識困難(1/10)であった.両足部とも骨盤より右に位置する状態を正中と認識したが,一側ずつ肩・骨盤・股関節の位置関係を問う空間課題等で臥位・座位の左右対称性は改善した.しかし,歩行時左立脚中期で骨盤14°右傾し右荷重は変わらず,左内転筋の伸張反応みられ転倒を繰り返していた.
【病態解釈・治療仮説】消去現象により,両足接地で左側に注意が向かず接触・空間情報を認識困難で,歩行時に右荷重で体幹右傾した.両足接地時の左足底の接触情報と身体の左右空間情報の構築により歩行時に体幹の傾きを制御できると考えた.
【訓練と結果】両足底を板に乗せ,左右に動かし「踵が股関節の正面に位置したら回答」の空間課題を週1回,40分実施した.左側の距離を認識困難だったが,徐々に左側に注意が向き「左足が股関節の正面の時に右足も正面」と両足の空間に関する回答が得られた.日常生活で左右の下肢・体幹の空間位置関係に注意を向けてもらった.1か月後,左右同時の足底接触で左側を認識(9/10),左右同時の股関節運動で左側の距離を認識(8/10),歩行時に左側に荷重,左内転筋の伸張反応を制御し骨盤6°右傾,体幹制御し転倒なく歩行可能になった.
【考察】触覚性消去現象は両側性の注意が不十分で左右の感覚情報を比較できず,正中性の獲得が困難である(唐沢,2016).両足接地した空間課題により左右に注意が向き,空間・接触情報を比較したことで運動イメージ想起や身体各部を統合でき,歩行時の体幹の傾き制御につなげられたと考える.消去現象を呈し体幹が傾いて歩行する対象者に,両足接地した空間課題により両足の情報構築することが歩行時の体幹の傾き制御に有効であることが示唆された.
【倫理的配慮】本発表に関し書面で同意を得た.