第22回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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[S3] 神経系(下肢/体幹)

[S3-04] 両下肢に注意を向ける課題を行い,麻痺側下肢の躓きが軽減した右片麻痺症例

*菅原 紘子1 (1. 函館稜北病院)

【はじめに】
 歩行中に麻痺側の躓きに気づかず,転倒しそうになる症例を経験することは多い.今回,両下肢に注意を向ける課題を行い,見守りで歩行可能となった症例について報告する.

【症例】
 左脳梗塞を発症した60歳代男性.発症から2ヶ月で当院へ転院となった.失語症,注意機能低下があり,Br.stage下肢Ⅲ,感覚は軽~中等度低下していた.起居移乗動作は左側優位の動作で,立位では右下肢が浮いていた.歩行は支持機能では右膝関節過伸展,到達機能ではクリアランス低下があり,4点杖・SLBを使用した歩行訓練から開始した.歩行時は特に右下肢へ注意が向きづらく,振り出しが不十分でも前進しようとする為,介助が必要であった.転倒しそうになったことは分かるが,どうして転倒しそうになったかを認識することは難しかった.簡単な接触・空間課題は認識可能で,注意が持続する範囲であれば,気づくと動作の修正が可能であった.TUGは4点杖歩行で28.44秒だった.

【病態解釈】
 外部環境や左上下肢へ注意が向くと,右上下肢への注意の分配が困難であった.さらに起居移乗動作では左側優位な動作を反復しており,より左側優位の情報構築が強化され,右側へ注意をむけることが困難になっていたと考える.歩行における両足の関係性の再構築が必要と考えた. 

【訓練・結果】
 足型のイラストを提示し,足部の位置を問う課題.日常生活への汎化も考慮し,右下肢の位置をランダムに接地し,立ちやすい位置へ修正を行う課題を実施した.この課題後,膝関節までは認識可能となり,自発的に右下肢の位置を修正する頻度が増加した.その後,下肢で図形を描き図形を認識する課題,スペーサーの高さを認識する課題を行った.課題の解答時間の短縮に伴い,右下肢の躓きの軽減を認め,さらに気づいて自制出来る頻度も向上した.歩行中に右足が分からなくなることは減ったと記述があり,介入約1ヵ月半で病棟への歩行導入が可能となった.最終的にはTUGは1本杖歩行で18.68秒となり,病棟では見守り歩行,人の少ない環境では自立歩行が可能となった.

【考察】
 右下肢だけでなく,両下肢に注意をむける課題を行ったことで,両下肢へ注意を分配することが可能となり,右下肢の躓きが軽減したと考える.内部観察の検証や,客観的な評価が不十分な所は今後の課題としたい.

【倫理的配慮】
 本発表に対し,症例に対して説明し同意を得ている.