Riabilitazione Neurocognitiva 2022

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一般演題

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[S3] 神経系(下肢/体幹)

[S3-06] 柔道の競技経験を活かした訓練課題により歩行障害が軽減した機能性神経障害の1例

*森 武志1、菊地 豊1、古井 啓2、美原 盤2 (1. 脳血管研究所美原記念病院 神経難病リハビリテーション課 、2. 脳血管研究所美原記念病院 脳神経内科)

【はじめに】心因性非てんかん発作(PNES)後に右麻痺の機能的神経障害(FND)に対し、柔道の競技経験を参照した課題で歩行障害が軽減した症例を経験したので報告する。

【症例】症例はFND発症後1年が経過した10代後半女性。OT養成校の学生。2ヶ月当院入院後、外来リハビリ開始(週1回PT60分、OT60分)となる。右片麻痺を呈し、バビンスキー反射陰性、感覚は下肢表在・深部感覚中等度鈍麻、MMTは下肢1〜2、痺れを右手掌と右股関節から足部に認めた。歩容は右下肢ぶん回しと足部引きずり、excessive slowness(ES)を呈し、内受容感覚の正確さ指標の心拍検出課題で誤りを認めず、内受容感覚の認知的側面指標の内受容感覚気づきの多次元的評価(MAIA)が13.2点と低下を示した。麻痺肢の機能練習で「どこに力を入れてよいか分からない」とES増強を認めた。MAIAの結果から足底圧弁別課題など身体感覚へ注意を誘導する訓練で運動麻痺の軽減は得られたが歩行のESとぶん回し歩行が残存した。そこで症例の競技経験のあるレスリングのタックルと柔道の大外刈りについて歩行遊脚相と類似性を分析する課題を行い、柔道の大外刈りの運動イメージ後に歩行のESとぶん回し歩行の軽減がみられた。以降、柔道の運動イメージを活用した訓練を実施した。

【経過】外来PT2ヵ月後に右足底の痺れは消失し、感覚障害は表在・深部感覚軽度鈍麻に軽減、MMTは右下肢2から4に向上し、麻痺肢の運動におけるESが減少した。10MWTが10.1秒から6ヶ月後に8.3秒、6MDは260mから6ヶ月後390mに向上し、階段昇降が可能となった。MAIAが6ヶ月後に20.8点へ向上した。

【考察】本例は柔道の競技経験を活かした運動イメージ課題後に歩行のES軽減を認めた。この背景に、本例にとって柔道の大外刈りと遊脚相の間に運動学的な類似性が運動の難易度を軽減させた可能性がある。また、FNDの運動障害に対する直接的な機能練習は増悪させる(Nielsenら、2015)危険性が指摘されており、過去の競技経験をイメージした運動課題でESが見られなかったことから、運動障害に対して間接的な訓練として成立し症状の増悪を引き起こすことなく機能改善に繋がったと考えられた。

【倫理的配慮】本報告にあたり脳血管研究所個人情報保護規定に則り説明の上署名による同意を得た。