[S5-04] 右内頸動脈-後交通動脈瘤術後に複視を呈した症例に対する介入経験
―両眼の共同運動に着目して―
【はじめに】今回,動脈瘤術後に複視が出現しADLに困難さが生じていた症例に対し,眼球運動の評価をもとに介入を試み,良好な結果を得たので報告する.
【症例紹介】症例は右内頸動脈-後交通動脈分岐部の動脈瘤により動眼神経を圧迫され,動脈瘤術後に複視が出現した70歳代女性である.39病日,運動麻痺はFMA上肢項目66/66点,下肢項目42/48点,10m歩行は10.2秒,19歩(杖歩行)であったが,複視により移動時に人や壁の距離感がつかめず恐怖心があったためFACは3点で監視を要した.ADLでは,複視のため掴み損ねや食事の取り溢しがみられ,右眼を閉じて左眼のみで行う代償がみられていた.
【評価・病態解釈】眼球運動の評価として,150㎝先の壁に照射されたレーザーを追視する課題を実施した.レーザーは中心点から垂直,水平,斜めの8方向に10㎝単位で最大100㎝まで照射し,片眼(右眼,左眼),両眼の3条件で実施した.その結果,片眼条件では複視は生じず,左右の眼それぞれで全方向の追視ができた.一方で,両眼条件では注視を求めた段階で複視が生じ,追視が困難であった.両眼条件での眼球運動の観察を行うと左眼のみ追視がみられ,右眼にはみられなかった.つまり,右の眼球運動障害によって共同性眼球運動が困難となり,複視が生じていると推測された.
【介入と結果】右眼の眼球運動の可否を口頭でフィードバックしながら,両眼で対象物を注視するように求めると複視が軽減され,「右眼で見てなかったんやね」と気づきが得られた.そこで,机上に配置したブロックを目標地点まで,両眼で注視しながらリーチする課題を20分間実施した.課題中の右眼の眼球運動の可否,すなわち共同性眼球運動が複視の出現と関連していることを教示した.その結果,即時的に複視は改善され,物品を掴み損ねることはなくなった.また,歩行時の恐怖心が軽減され,杖歩行自立(FAC4点)となった.
【考察】右眼の眼球運動を自覚し,誤差修正することで眼球運動が即時的に改善し,複視が軽減したことから,日常生活でみられた右眼を閉じる代償が左右の協調的な眼球運動の回復を阻害していた可能性が考えられた.複視がみられる症例において,残存機能と代償の要素を把握することの重要性が示唆された.
【倫理的配慮】本発表において説明及び同意を得た.
【症例紹介】症例は右内頸動脈-後交通動脈分岐部の動脈瘤により動眼神経を圧迫され,動脈瘤術後に複視が出現した70歳代女性である.39病日,運動麻痺はFMA上肢項目66/66点,下肢項目42/48点,10m歩行は10.2秒,19歩(杖歩行)であったが,複視により移動時に人や壁の距離感がつかめず恐怖心があったためFACは3点で監視を要した.ADLでは,複視のため掴み損ねや食事の取り溢しがみられ,右眼を閉じて左眼のみで行う代償がみられていた.
【評価・病態解釈】眼球運動の評価として,150㎝先の壁に照射されたレーザーを追視する課題を実施した.レーザーは中心点から垂直,水平,斜めの8方向に10㎝単位で最大100㎝まで照射し,片眼(右眼,左眼),両眼の3条件で実施した.その結果,片眼条件では複視は生じず,左右の眼それぞれで全方向の追視ができた.一方で,両眼条件では注視を求めた段階で複視が生じ,追視が困難であった.両眼条件での眼球運動の観察を行うと左眼のみ追視がみられ,右眼にはみられなかった.つまり,右の眼球運動障害によって共同性眼球運動が困難となり,複視が生じていると推測された.
【介入と結果】右眼の眼球運動の可否を口頭でフィードバックしながら,両眼で対象物を注視するように求めると複視が軽減され,「右眼で見てなかったんやね」と気づきが得られた.そこで,机上に配置したブロックを目標地点まで,両眼で注視しながらリーチする課題を20分間実施した.課題中の右眼の眼球運動の可否,すなわち共同性眼球運動が複視の出現と関連していることを教示した.その結果,即時的に複視は改善され,物品を掴み損ねることはなくなった.また,歩行時の恐怖心が軽減され,杖歩行自立(FAC4点)となった.
【考察】右眼の眼球運動を自覚し,誤差修正することで眼球運動が即時的に改善し,複視が軽減したことから,日常生活でみられた右眼を閉じる代償が左右の協調的な眼球運動の回復を阻害していた可能性が考えられた.複視がみられる症例において,残存機能と代償の要素を把握することの重要性が示唆された.
【倫理的配慮】本発表において説明及び同意を得た.