Riabilitazione Neurocognitiva 2022

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[S6] 小児

[S6-02] 注意欠陥多動性障害例に対する認知課題の導入と実践報告

*髙橋 秀和1、木村 正剛1 (1. 北海道こども発達研究センター)

【はじめに】
 注意欠陥多動性障害(以下:ADHD)とは脳内の機能不全による,不注意・多動性・衝動性を主症状とする発達障害である.今回ADHDを呈す児童に対して視覚的分析・記憶課題を実施したことにより,実行機能に対する変化を認めた為,以下に報告する.

【症例】
 通常学級に在籍する6歳5ヶ月男児.ADHD-RS 41点(不注意21点・多動/衝動性20点).Kohs立方体テストはIQ100以上だが,TMT-A 100秒・TMT-B 235秒,Digit Span順唱4桁・逆唱3桁,Tapping Span順唱&逆唱3桁と注意機能やワーキングメモリ(以下:WM)の低下を認めたほか,相手の説明を待てずに手が出てしまう場面を認めた.

【病態解釈】
 Sonuga-Barkeら(2010)はADHDに関して3つの障害(実行機能・報酬系・小脳機能)を提唱している.本症例は実行機能(主に抑制制御とWM)に低下があると解釈した.WM容量の乏しさが,情報分析における判断・選択の幅を狭め抑制制御の困難さを助長させた結果,衝動的行動に繋がっていると考えた.

【治療介入】
 視覚情報優位に注意が向き易い特徴を考慮し,セラピストの提示する課題に対し注視・分析・再現することをルールとして①視覚分析課題(空間的配置)と②視覚的記憶課題(空間的配置及び順序)を1回30分・週2回・3ヶ月間実施した.道具は9マスに区切られたボードと児童が興味を示すキャラクター人形を使用し,人形の数・向き・手順を増やし段階的に難易度を変化させた.

【結果と考察】
 ADHD-RS 31点(不注意17点・多動/衝動性14点).TMT-A 75秒・TMT-B 129秒と短縮を認め,Digit Span順唱6桁・逆唱3桁,Tapping Span順唱&逆唱4桁と実行機能に変化を認めた.WM容量の変化が課題遂行における効率や日常的な行動の変化に繋がったと考える.一方で,訓練②では,動作の再現において性急さが見られ,リズムやタイミングを測ることの困難さを認めた.これは上記の小脳機能(時間処理)による影響が考えられた為,課題として追加し経過を追いたいと考えている.今後も更なるADHDの病態解釈と介入方法について検討していきたい.

【倫理的配慮(説明と同意)】
 保護者にプライバシーの保護について説明し同意を得た.