Riabilitazione Neurocognitiva 2022

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一般演題

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[S7] 整形外科疾患

[S7-01] 歩行行為に対し訓練と現実の行為との比較に難渋した症例に対する介入

*吉田 将臣1、岡田 仁1、山中 泉1、吉岡 博1、安田 真章2 (1. 一般社団法人 巨樹の会 松戸リハビリテーション病院、2. 東京大学医科学研究所附属病院)

【はじめに】
今回, 左大腿骨頸部骨折後に歩行時の左膝折れが生じた症例に対して,視覚を用いた自身の歩行動画分析から行為のエラーの自覚が得られたことを契機に,訓練と行為の比較が可能となり,その後独歩移動の獲得へ至った経験を報告する.本症例の特徴としては個々の接触情報・空間情報の認識は可能であるも,体性感覚情報と現在の行為との比較が困難であること,運動イメージの想起が困難であることなどが挙げられた.
【症例紹介と病態解釈】
60代男性,左大腿骨頚部骨折となり人工骨頭挿入術が施行された.既往に5年前に発症した右被殻出血による左片麻痺があり, Br-sはⅢ-Ⅳ-Ⅳ,FBSは4点,表在覚・深部感覚は中等度鈍麻だった.評価的訓練では接触情報・空間情報の認識は可能であった.手すりを使用して軽介助で歩行可能であったが,立脚中期に左膝折れがみられていた.しかし,行為のエラーの自覚は乏しく,体性感覚情報と現在の行為を比較する事は困難であった.歩行時は常に下方を向いて視覚情報が優位であり,「歩く時はとにかく足が引っかからないようにしている」との内省があった.本症例は歩行に対し視覚情報に依存しており,かつ訓練と行為との比較が困難であったため,行為のエラーに気づくことができず,学習が阻害されているのではないかと考えた.歩行の動画を提示し「膝が不安定な感じがしている,体がくの字になっている」と視覚によりエラーの自覚が可能であることが確認できた. そのため,エラーが自覚されたコンポーネントと訓練にどのような関係があるか関連付けを促しながら訓練を行うことで歩行の改善が図れるのではないかと考えた.
【訓練】
左支持機能に対して足底の圧情報構築を図るための訓練を行い,かつ行為場面との比較を回答として求めた.介入から1ヶ月後にはFBSが39点まで向上し,独歩で自室からトイレまでの移動が可能となった.その際「左足にじっくり体重を乗せられるようになった」との発言もあり,左立脚中期の膝折れも改善を認めた.
【考察】
本症例は訓練と実際の行為の比較が困難であったため,行為の改善を図ることが出来なかったと考える.しかし自身の歩行動画を見ることで自身のエラーを具体的に自覚することができ,訓練と行為の具体的な比較が可能となったため,行為の改善に至ったと思われる.
【倫理的配慮(説明と同意)】
本発表に際し本人に説明し書面にて同意を得た.