第22回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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[SY] 指定シンポジウム①(患者と言語と臨床展開)

2022年10月1日(土) 12:50 〜 14:20 第1会場 (ライブ配信)

座長:河野 正志(五条山病院)

13:35 〜 14:20

[SY-02] 患者の世界で患者と語る- 対話における文脈の重要性 -

*玉木 義規1 (1. 甲南病院)

「セザンヌは観察者のために中間世界を創造する.なぜなら認知過程を導いて(差異と類似)通常世界と観察者との関係を改変しようとしているからである.セラピストも“患者と語る”ことで同様の手続きをとる.」
 2009年,カルロ・ペルフェッティは“患者と語る”という研究テーマを掲げた.
 ある対象や現象を見たり経験したりしたとしても,身体や価値観が違えばそれぞれが惹起する表象や判断,その後に続く行為は様々である.当然その経験を語る言葉は一つとして同じものは存在しない.育った地域の違いで文化的背景が異なるのはもちろん,家庭環境,趣味,嗜好など価値観の複雑性に影響を与える要因は枚挙にいとまがない.患者は患者の世界における行為の中で克服すべき課題と直面している.その課題の克服を目指して対話しようとするならば患者の世界で対話した方がよいと私は考えている.患者に馴染みのある言葉や事柄の方が豊かな表現ができるし,今現在患者が志向していることの方がより注意を向けて話すことができるであろう.セラピストが用意した文脈で対話しようとしても患者はうまく思考できないことが多い.失語症や失行症においては古くから自動性と意図性の解離が存在すること,つまり行為遂行における文脈の影響が認識されてきた.失語や失行だけでなく高次脳機能障害を抱える患者はこのような文脈を意識した関わりが重要であると感じることが多い.患者がどのような世界で生きており,どのような判断でその行為に至ったのかを患者の言語から紐解くことで着地点(中間世界)が見えてくることがある.本シンポジウムでは,高次脳機能障害の患者との臨床における対話について症例を通して話題提供し,We-mode rehabilitationの可能性を討議したい.