第22回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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[SY] 指定シンポジウム②(患者の経験への科学による接近)

2022年10月1日(土) 14:30 〜 16:00 第1会場 (ライブ配信)

座長:園田 義顕(高知医療学院)

15:15 〜 16:00

[SY-04] パーキンソン病患者の世界への接近- 小字症とすくみ足を手がかりに -

*三上 恭平1 (1. 登戸内科・脳神経クリニック)

パーキンソン病(PD; Parkinson’s disease)は中脳黒質にあるドパミン神経細胞が緩徐進行性に変性することで様々な症状を呈する疾患である.しかし,その病理は黒質ドパミン神経細胞以外の広範な部位にも及ぶ多系統変性疾患であり,進行期以降に見られる多彩な症状や患者の記述の背景には,広範な神経変性が関与している.
 PD患者のうち60%から70%には,意図した文字サイズよりも小さくなる小字症(micrographia)という症状が見られる.PD患者の小字症には,一文字目から文字サイズが小さくなるタイプの小字症(CM; consistent micrographia)と,徐々に文字サイズが小さくなるタイプの小字症(PM; progressive micrographia)がある.CMは進行期以降でも抗PD薬の反応性が良好で,オン時には文字サイズも改善する.一方,PMに対しては抗PD薬の効果が乏しく,オン時にもオフ時と変わらず文字は徐々に小さくなる.つまりCMは大脳基底核回路の障害により生じる病態であるが,PMは大脳皮質を含む広範な神経領域の機能低下が影響している病態である.
 PMのある患者では,半自動的に書けてしまうような習慣的な文字内容を記載する時や急いでいる時,小さい紙面に記載する時は症状が増悪しやすい.このような小字症に見られる特徴はすくみ足の特徴と類似しており,すくみ足のある患者では文字サイズが小さくなりやすいことや(Heremans E, et al., 2016),オン時のすくみ足の重症度は書字症状の重症度と関係していること(Bartels AL, et al., 2003)がすでに報告されている.つまり,小字症とすくみ足は関連した背景病態の存在が推察される.
 本シンポジウムでは,PD患者に見られる小字症とすくみ足という2つの現象と患者の記述,神経科学から患者の経験している世界に迫り,話題提供する機会としたい.