Riabilitazione Neurocognitiva 2023

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クリニカル・ディスカッション

クリニカル・ディスカッション

[CD] クリニカルディスカッション⑥

Sun. Oct 8, 2023 1:10 PM - 2:10 PM 第3会場 (B1F ギャラリー1)

座長:浅野 大喜(日本パプテスト病院)、塙 杉子(名古屋女子大学)

1:10 PM - 1:40 PM

[CD-11] Dyslexia症状を呈する児童の書字行為に対する介入- 学習方法の変容に向けて -

*田中 雄大1 (1. NPO法人子どもの発達・学習を支援するリハビリテーション研究所)

【はじめに】今回,Dyslexia症状を呈する児童の書字行為に対して介入を行った.本児は筆順に対する関心が乏しく,漢字書字の誤りを顕著に認めていた為,筆順を含めた書字行為の学習方法の変容を目的に介入した.その結果,文字と運動の統合や内的な変化により漢字の学習方法に変化を認めた為,以下に報告する.

【症例紹介】支援学級に通う8歳4か月男児.読み書きの臨床症状チェックリスト(読字3 書字9),STRAW-R(RAN課題13.84秒,漢字126語音読40/126,漢字の読み19/20 書き15/20),Rey-Osterrieth複雑図形検査(模写30/36,即時再生18/36,遅延再生15/36),WAVES(形おぼえ6.9Y,形写し8.3Y,形なぞり7.9Y).漢字書字の外部観察では,形態的な過不足や微細な誤りに加えて,書字速度は速く筆順が一定しない様子が観察された.内省では「漢字は見て覚えるんよ.思い出すときは頭で考える」と記述を得た.

【病態解釈】本児は,模写や運筆に問題は見られないが,文字視覚心象,文字聴覚心象,文字運動覚心象,意味心象の4つの記憶・統合を必要とする漢字書字において,文字想起,筆順のエラーを認めている.本人の記述から,文字視覚心象と文字運動覚心象の多感覚的な統合の未熟さがあり,視覚情報に偏った方略で学習している為,多様なモダリティによる学習方法への変容を促すことが必要だと考えられた.

【治療介入】文字と筆順(運動の時間性)の統合を図る目的で,色・長さの異なる棒で作成した漢字を提示し他動運動による運動の順序性に注意を向ける課題を行った.解答として,画要素の色や何画まで描いたのかを求めた.加えて運動イメージの想起と結果の照合を行った.

【結果と考察】運動覚を用いた学習方略を通して「学校で書き順を気にしてやってみたよ」「漢字は嫌いじゃなくなった」といった内的な変化に加えて文字想起時に空書の使用もみられ始めた.運動覚心象による新たな記憶や経験が効率的な学習方法として自覚され,能動的な学習姿勢につながったと考える.今回の症例から,多様なモダリティによる学習の記憶や意識経験はメタラーニングとの関連があるのではないかと考えられた.

【論理的配慮,説明と同意】本報告に際し本人,保護者の同意を得ている.