Riabilitazione Neurocognitiva 2023

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クリニカル・セミナー

クリニカル・セミナー

[CS] クリニカルセミナー⑤

Sat. Oct 7, 2023 2:40 PM - 3:30 PM 第2会場 (B2F 多目的スペース)

座長:新田 麻美(北海道医療大学病院)

2:40 PM - 3:30 PM

[CS-05] 行為のプロジェクション

*三上 恭平1 (1. 登戸内科・脳神経クリニック)

我々の行為には,①身体や環境から様々な情報を受容し,②その情報を基に表象を構築,③その表象を基に世界に働きかけるというプロセスが含まれる.このような内的に構成された表象と世界とを結びつける心の働きを「プロジェクション(=投射)」という.さらに,プロジェクションには,今ここにいる私の身体を介して得られる情報のみならず,過去や未来の情報も含む.例えば,「喉が渇いて目の前にある冷たそうなコップの水に手を伸ばす」という行為には,コップは私が手を伸ばせば手が届きそうなところにあると判断され,そのコップの水は冷たそうで喉が渇いている私の要求を満たしてくれそうであり,それを今飲んでもよさそうな状況であるという,「~~そう」であるという情報を含む.これらの情報には,過去の経験に基づく情報や未来の予測についての情報を含んでいる.
 通常,このような現在-過去-未来の情報に基づくプロジェクションのプロセスは,円環状に繰り返され,どこかで異常が生じた場合には修正され行為が洗練化される.先程の例でいうと,手を伸ばしてみたが届かないという経験をしたら,次は少し近づいてから手を伸ばすように修正するし,その状況で水を飲むことで注意されれば,次はその状況でコップに手を伸ばそうとしないであろう.
 しかしながら,病気や怪我により脳や身体に異常が生じると,行為を洗練化していくプロセスがうまくいかずに不都合な行為が繰り返される場合がある.パーキンソン病患者の中には,いつも同じような失敗を繰り返し,うまくいかないことを自覚しているにも関わらず,行為を変化させることができない者がいる.こうした背景には,今ここにある身体を介した情報のみでは説明できないプロジェクションの異常が影響しているかもしれない.
 本セミナーでは,プロジェクションの考えをベースにパーキンソン病患者の行為の異常を再考し,ディスカッションする機会としたい.