Riabilitazione Neurocognitiva 2023

Presentation information

一般演題

口述発表

[O] 口述発表①

Sun. Oct 8, 2023 9:20 AM - 10:05 AM 第1会場 (B2F 伊藤謝恩ホール)

座長:赤口 諒(摂南総合病院)

9:35 AM - 9:50 AM

[O-02] 行為間比較の治療概念とオートポイエーシスの特性との対応関係

*村部 義哉1 (1. 京都府立医科大学大学院(研修員))

【はじめに】
 最新のオートポイエーシス・モデルでは,生命を「産出的自己(Sich)」と「位相的自己(Selbst)」による『二重の自己』と,環境(Umwelt)との相互作用(System)により形成される自己産出系システムとしている(河本, 2014).今回,行為間比較の治療理論とオートポイエーシスの特性(自律性,個体性,境界の自己決定,入出力の不在)との対応関係を明確化し,行為間比較の神経現象学的展開の基礎付けを試みた.

【方法】
 認知理論および行為間比較の各主要概念とオートポイエーシスのシステム論の対応関係を照合し,治療理論の再定式化を図った.

【結果】
 Sichにおける構成素(感覚モダリティ)が,特定の行為システムやコンポーネントに則した形態でユニットとして関係付けられることよって,各個体特有のSelbstが形成される.また,構成素の関係性の形成過程において導入される概念が,「過去の行為(Pn)と現在の行為(Pa)の比較」による「差異の認識」であり,修正された行為(Mpa)への移行過程が「多感覚統合」による「情報の構築」である.さらに,特定の関係性による固有領域の形成過程は,「環境との相互作用(Umwelt-System)」を介して開放的に進行する再帰的循環構造を有しており,その結果としての固有領域の安定化が「世界への意味付与」である.「認知過程の活性化」とは,身体と環境の相互作用における「行為の最中における差異の類似化過程」に導入されるものであり,「行為の創発」とは,こうした身体システムの変化の副次的産物である.オートポイエーシスのシステム論の最大の特性は「自己言及的な構成素の産出」であり,その条件である「自律性」「個体性」「境界の自己決定」「入出力の不在」は,それぞれ「Mpaに基づいた行為システムの継続による特定の感覚モダリティの創発」「過去と現在における自己の連続性の再接続」「Sich-Selbstにおける固有領域の形成」「自己言及的な身体表象の形成能力」として設定可能となる.

【考察】
 認知神経リハビリテーションの行為間比較へのパラダイムシフトは,神経現象学的側面の理論的活用でもある.オートポイエーシスのシステム論との理論的融合により,行為間比較の理論展開や臨床実践の論理性の向上が可能となるものと考えられる.