Riabilitazione Neurocognitiva 2023

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一般演題

ポスター発表

[P2] 神経系(上肢)

[P2-02] 脊髄小脳失調症31型患者の上肢の運動失調症状に対する代償戦略の分析と介入の試み

*赤口 諒1、伊藤 拓海1、河島 則天2、奥埜 博之1 (1. 摂南総合病院 リハビリテーション科、2. 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 運動機能系障害研究部)

【はじめに】
 脊髄小脳失調症31型(SCA31)は運動失調を主徴とする純粋小脳型の神経変性疾患であり、症例の多くは動作不安定性への対応として関節スティフネスを高めるなどの代償戦略を採る。本発表では、転倒による骨折後ギブス固定により失調症状の著明な増大が生じた症例について、介入に伴う改善の経過と背景要因について考察する。

【症例紹介】
 対象は6年前にSCA31と診断された60代男性で、自宅内の移動は歩行器で自立しているが転倒を繰り返していた症例であった。右第四趾基節骨骨折および左脛骨近位端骨折により6週間のギブス固定を経て部分荷重練習を開始したが、骨折前と比して左上肢の失調症状が著しく増幅することで立位・歩行に大きな困難を伴った。また、左上肢の鼻指試験時には企図振戦の発現により動作不安定性が大きく、右手で左手を掴み抑え込む様子を認めた。

【介入指針と経過】
 動作時の必要以上の力を抜くことで企図振戦の軽減を認めたことから、失調症状に対する過度な代償がかえって動作不安定性を増幅させている可能性があると考え、立位姿勢時および上肢動作時に運動企図や過剰努力を軽減させるような動作教示および課題構成を用いて2日間重点的に介入を行った。SARAスコアは指追い試験、鼻指試験を中心に22点から17.5点への改善を示した。把持力計測装置(テック技販社製)を用いた計測では、介入前後の左上肢の物体把持力が7.4Nから3.9Nに低減、把持物体を上下させた際の把持力-負荷力のカップリングの強さを反映する相関係数は0.38から0.80へと増加し、予測制御の改善を示す結果が得られた。

【考察】
 本症例におけるギブス固定後の状態は、日常的に行っていた失調症状への代償戦略が一時的に忘却され、運動企図が負の作用を及ぼした結果(企図振戦の増強、あるいは本態性振戦)を反映していたものと考えられる。緩徐進行を特徴とする神経変性疾患症例の場合、症状進行の過程に応じた代償戦略の適正化を図る視点とともに、合併症状と失調症状の関連性に焦点を充てた病態把握と適切なレベルの代償戦略の再習得を図ることが重要だと考えられる。

【倫理的配慮、説明と同意】
 発表に関して本症例に説明を行い書面にて同意を得ている。