[P2-04] 視床出血症例に対し重量覚を利用した介入の一例
―生活期リハビリにおける調理動作の獲得に向けて―
【はじめに】
今回,感覚障害を呈する症例に対して重量覚に着目し介入した結果,調理動作の改善に繋がったため報告する.
【事例】
右視床出血により左片麻痺 (BRS上肢Ⅴ手指Ⅴ下肢Ⅳ)を呈した60代女性.右利き.回復期リハビリを経て,発症約2か月で自宅退院となり訪問リハビリが開始となる.左上下肢の表在・深部感覚共に検査結果の正答率が4/10程度と中等度鈍麻.左上腕~手指末梢に強い痺れを認めた.握力右25㎏左13㎏.目立った高次脳機能障害はなかった.病前は家事全般が家庭内役割であり料理が好きであった.
左上肢でのフライパン操作では「フライパンが重たく自分の思うように動かせない」との記述を認めた.動作評価ではフライパンの柄を強く握りこみ,前腕や手関節の動きはほとんど見られなかった.
【病態解釈】
把持した対象の円滑な操作には,視覚情報に加え手掌面からの知覚情報を介した手関節及び前腕の空間的な運動制御が特に重要となるが,症例は感覚障害と強い痺れが過剰な筋収縮を引き起こし求心性情報が得られにくくなっていると考える.評価の中で一番痺れの影響が少なかった重量覚に着目し,正しい感覚情報が末梢から得られれば過剰な筋収縮が軽減し動作の円滑さが得られるのではないかと考え訓練を構築した.
【訓練及び結果】
フライパン操作を想定した設定で1)前腕回外位で手掌面に板を置きどの方向に錘(10g,20g)が置かれたかを問う訓練,2)柄のついた多軸不安定板の柄を把持しどの方向に錘が置かれたかを問う訓練を週1回40分の介入で3週間実施した.結果,介入時と比較し握力の変化は見られなかったが,フライパンを把持する際の過剰な握り込みを制御し末梢を分離させた動きが観察され,「フライパン全体に卵が広げられるようになった」と記述に変化があった.また,お盆を使用した運搬動作は短距離であれば水平性を保ち同時に複数の食器の運搬が可能となった.
【考察】
訓練の中で重さの予測に合わせた前腕や手関節の動きを獲得できたことが今回の動作改善に繋がったと考える.しかし,実際の動きの改善は得られたもののフライパンが重たいとの訴えは継続しており,末梢だけでなく肩関節や体幹などより中枢への介入も検討することでより動作の改善に繋がるのではないかと考える.
【倫理的配慮】
本発表は本人に説明し同意を得た.
今回,感覚障害を呈する症例に対して重量覚に着目し介入した結果,調理動作の改善に繋がったため報告する.
【事例】
右視床出血により左片麻痺 (BRS上肢Ⅴ手指Ⅴ下肢Ⅳ)を呈した60代女性.右利き.回復期リハビリを経て,発症約2か月で自宅退院となり訪問リハビリが開始となる.左上下肢の表在・深部感覚共に検査結果の正答率が4/10程度と中等度鈍麻.左上腕~手指末梢に強い痺れを認めた.握力右25㎏左13㎏.目立った高次脳機能障害はなかった.病前は家事全般が家庭内役割であり料理が好きであった.
左上肢でのフライパン操作では「フライパンが重たく自分の思うように動かせない」との記述を認めた.動作評価ではフライパンの柄を強く握りこみ,前腕や手関節の動きはほとんど見られなかった.
【病態解釈】
把持した対象の円滑な操作には,視覚情報に加え手掌面からの知覚情報を介した手関節及び前腕の空間的な運動制御が特に重要となるが,症例は感覚障害と強い痺れが過剰な筋収縮を引き起こし求心性情報が得られにくくなっていると考える.評価の中で一番痺れの影響が少なかった重量覚に着目し,正しい感覚情報が末梢から得られれば過剰な筋収縮が軽減し動作の円滑さが得られるのではないかと考え訓練を構築した.
【訓練及び結果】
フライパン操作を想定した設定で1)前腕回外位で手掌面に板を置きどの方向に錘(10g,20g)が置かれたかを問う訓練,2)柄のついた多軸不安定板の柄を把持しどの方向に錘が置かれたかを問う訓練を週1回40分の介入で3週間実施した.結果,介入時と比較し握力の変化は見られなかったが,フライパンを把持する際の過剰な握り込みを制御し末梢を分離させた動きが観察され,「フライパン全体に卵が広げられるようになった」と記述に変化があった.また,お盆を使用した運搬動作は短距離であれば水平性を保ち同時に複数の食器の運搬が可能となった.
【考察】
訓練の中で重さの予測に合わせた前腕や手関節の動きを獲得できたことが今回の動作改善に繋がったと考える.しかし,実際の動きの改善は得られたもののフライパンが重たいとの訴えは継続しており,末梢だけでなく肩関節や体幹などより中枢への介入も検討することでより動作の改善に繋がるのではないかと考える.
【倫理的配慮】
本発表は本人に説明し同意を得た.