Riabilitazione Neurocognitiva 2023

Presentation information

一般演題

ポスター発表

[P2] 神経系(上肢)

[P2-07] 着衣動作の獲得に向け自己の行為に対する気づきを促した一例
-三人称視点での動画FBを用いて-

*中谷 有里1、寺田 萌1、藤原 瑶平1、市村 幸盛1 (1. 村田病院)

【はじめに】
 着衣動作は,身体と衣服の空間関係が経時的に変化し,複数の認知・遂行過程が関与する複雑な動作である(横山,2012).今回,着衣動作の改善を目的として身体と衣服の関係性への注意の向け方に着目し,動画フィードバック(FB)を用いて介入したところ,良好な結果を得たため報告する.

【症例】
 右散在性脳梗塞を認めた70歳代右利き男性.左BRS上肢手指Ⅳ,感覚は中等度鈍麻で,注意・遂行機能障害を認めた.前開き上衣の着衣は,手順の誤りはないが所要時間は55秒~2分20秒とばらつきが大きかった.失敗時には左袖通しが不十分なまま無理に右上肢を通そうとするなどのエラーがあり,その際身体や衣服の確認をする様子が認められなかった.自らの行為については,最終的な着衣の可否のみでその過程について記述しなかった.一方,「今どうなっていますか」との声掛けのみで,具体的に指摘せずともエラー箇所の探索・修正が可能であった.また,療法士による症例の着衣動作の模倣や,自身の着衣動作の動画の分析においても,適切にエラーに気づき修正方法の説明が可能であった.その後の実動作では左肩から衣服が落ちていないか確認する様子を認めた.

【病態解釈と介入】
 症例は視認すれば行為の修正が可能にも関わらず,自発的に行為を確認しようとしなかった.これは,行為の各過程でどのように身体や衣服に注意を向けるべきかの気づきが乏しいことが要因と考えた.誤反応の気づきと修正方法の学習に関しては,三人称視点での動画FBが有効(Ownsworth,2006)とされている.本症例においても,行為の各過程での身体と衣服に対する注意の向け方を学習させるため,着衣成功時と失敗時の動画を繰り返し観察し,差異について思考させた後,実動作練習を行った.課題は1日40分とし,計7日間実施した.

【経過と結果】
 動画観察中の左袖通し時には「ここまで上げなあかん」,背部操作時には「左まだまだやのに無理やり引っ張ってるな」等の詳細な記述が出現し,実動作においても自発的に行為を確認するようになった.着衣所要時間は1分4秒~1分12秒とばらつきが減少した.

【考察】
 行為過程での身体と衣服の関係性に対する注意の向け方を学習できたことで,自発的にエラーに気づくことが可能となったと考えられた.

【倫理的配慮】
 発表に関して症例に口頭で説明し同意を得た.