[P2-11] 箸を使って食べることが困難となった症例との対話
~行為の再獲得への学習に着目して~
【はじめに】
今回,退院直後は使うことが出来た箸が使えなくなったという症例に対して,セラピストとの対話という経験を通して学習を促し,行為の改善を試みたので報告する.
【症例紹介と病態解釈】
60代女性,左視床出血により右片麻痺を呈した.発症から約2年後に自宅にて転倒.右大腿骨頸部骨折と右橈骨遠位端骨折を呈した.退院後のADLは自立.家事や義母の介護なども行っている.当施設へは転倒する以前から通所しており退院を機に通所再開となっている.Br.stageは上肢Ⅳ,下肢Ⅳ,手指Ⅳ,FBS42点,HDS-R30点,感覚は表在感覚および深部感覚共に中等度~重度鈍麻を呈している.介入当初は歩行の改善の為,主に下肢の訓練を行っていたが,介入時に「退院してから箸(ピンセット箸)が使えなくなった」「最初は出来たんだけど,だんだんこぼすようになったし,食べ物が箸から離れなくなった」という訴えから箸を使って食べる行為の改善に向けた訓練を行うこととなった. 初回介入時,現在の行為を行ってもらい,その行為について対話を行った.症例は自らの行為を「ダメだった」と記述はするものの,具体的に説明をする事が出来なかったため,セラピストの行為を観察してもらい,両者の違いについて対話を行った. すると,「私のは握りこんでしまっている」「(箸の)バネの感じを感じなければならない」などの記述が得られ,自らの問題点に注意を向ける事が出来るようになった.つまり本症例は注意の運用と運動イメージに変質を呈していたと考えられる.
【訓練の一例】
注意の向け方や運動イメージの構築を促す訓練として,視覚(他者の行為の観察)による観察と対話(言語)による行為の分析を行い,対象となる行為(箸を使って食べる)の改善に必要な情報構築を促すような日常動作を宿題として行った.介入直後から箸で物を掴むことが出来るようになり,3週目には「家では困らなくなった」との記述が聞かれるようになった.
【考察】
今回実施した訓練では,対話と観察の中から症例が自ら「箸で食べるためには何が必要なのか」を考え,自宅で実施した事により,短期間で大きな改善が得られたと考えられる.
【倫理的配慮,説明と同意】
本症例には,今回の発表に関する説明と同意について,書面にて了承を得ている.
今回,退院直後は使うことが出来た箸が使えなくなったという症例に対して,セラピストとの対話という経験を通して学習を促し,行為の改善を試みたので報告する.
【症例紹介と病態解釈】
60代女性,左視床出血により右片麻痺を呈した.発症から約2年後に自宅にて転倒.右大腿骨頸部骨折と右橈骨遠位端骨折を呈した.退院後のADLは自立.家事や義母の介護なども行っている.当施設へは転倒する以前から通所しており退院を機に通所再開となっている.Br.stageは上肢Ⅳ,下肢Ⅳ,手指Ⅳ,FBS42点,HDS-R30点,感覚は表在感覚および深部感覚共に中等度~重度鈍麻を呈している.介入当初は歩行の改善の為,主に下肢の訓練を行っていたが,介入時に「退院してから箸(ピンセット箸)が使えなくなった」「最初は出来たんだけど,だんだんこぼすようになったし,食べ物が箸から離れなくなった」という訴えから箸を使って食べる行為の改善に向けた訓練を行うこととなった. 初回介入時,現在の行為を行ってもらい,その行為について対話を行った.症例は自らの行為を「ダメだった」と記述はするものの,具体的に説明をする事が出来なかったため,セラピストの行為を観察してもらい,両者の違いについて対話を行った. すると,「私のは握りこんでしまっている」「(箸の)バネの感じを感じなければならない」などの記述が得られ,自らの問題点に注意を向ける事が出来るようになった.つまり本症例は注意の運用と運動イメージに変質を呈していたと考えられる.
【訓練の一例】
注意の向け方や運動イメージの構築を促す訓練として,視覚(他者の行為の観察)による観察と対話(言語)による行為の分析を行い,対象となる行為(箸を使って食べる)の改善に必要な情報構築を促すような日常動作を宿題として行った.介入直後から箸で物を掴むことが出来るようになり,3週目には「家では困らなくなった」との記述が聞かれるようになった.
【考察】
今回実施した訓練では,対話と観察の中から症例が自ら「箸で食べるためには何が必要なのか」を考え,自宅で実施した事により,短期間で大きな改善が得られたと考えられる.
【倫理的配慮,説明と同意】
本症例には,今回の発表に関する説明と同意について,書面にて了承を得ている.