Riabilitazione Neurocognitiva 2023

Presentation information

一般演題

ポスター発表

[P2] 神経系(上肢)

[P2-12] 力が抜けている認識が向上すると共に痙縮が軽減した
慢性期片麻痺症例

*松村 智宏1、沖田 かおる1、豊田 拓磨1 (1. 愛宕病院)

【はじめに】
 今回,自身の筋緊張に対する認識が低下していた症例に対して,BTX施注後にrTMSと運動感覚に注意を向ける認知運動課題を実施した.結果,自身の筋緊張に対する認識が向上すると共に痙縮が軽減した経過を報告する.

【症例紹介】
 症例は右放線冠損傷の脳梗塞により左片麻痺を呈し発症後3年以上が経過した80歳台の女性である. 左側のBRSは上下肢手指共にⅢレベル,WMFTはFASが40/70でブロックのリリースが困難であった.MASは長母指屈筋と浅指屈筋が2,虫様筋が1+であった.感覚は触覚はほぼ正常,位置覚は中等度鈍麻レベル(前腕2/5・手関節・手指3/5正答)であった.把持力は重量に対してや重量を予測した適切な筋出力が困難であった.左手指に対しては,「力が入って抜けない.力が入っている感じはわかるが,抜けている感じがわかりにくい.」と内省が聞かれ,自身の筋緊張に対しての認識が低下していた.左上肢の動かしやすさはNRSで2/10であった.

【病態解釈・治療課題】
 症例は運動感覚障害による予測と結果の不一致により自身の筋緊張に対しての認識が低下していた.これにより上肢の痙縮の増強を招き使用頻度を低下させていると考えた. 治療はボトックス施注2日後より高頻度のrTMSを右一次運動野に対して合計10回実施した.認知運動課題は,左示指~小指の運動距離,スポンジの硬度識別,対立つまみでの運動距離,肩や前腕の運動距離の認識課題を第一段階~第三段階にて実施した.

【結果】
 初期より15日後で,WMFTのFASが42/70でブロックのリリースが可能となった.MASは長母指屈筋と虫様筋が0,浅指屈筋が1となった.感覚は位置覚が軽度鈍麻レベル(前腕・手関節・手指4/5正答)で,把持力は重量に対する適切な筋出力が可能となった.左手指に対しては,「力が抜けている時がある.開くようになった.」と自身の筋緊張に対しての認識が向上した.左上肢の動かしやすさは,NRSで5/10となった.

【考察】
  今回,認知運動課題を実施し運動感覚に注意を向ける事で,予測と体性感覚フィードバックによる結果の照合が可能となり自身の筋緊張に対する認識が向上した.自身の筋緊張に対しての認識が向上すると共に痙縮が軽減する事で,上肢の使用頻度の増加に繋がったと推察された.

【倫理的配慮(説明と同意)】
 発表に対して本人に説明し同意を得た。