Riabilitazione Neurocognitiva 2023

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一般演題

ポスター発表

[P3] 神経系(下肢・体幹)

[P3-01] 患者との対話においてセラピストが用いる『方法』の会話分析による検討
〜セラピストは患者の言語記述をいかにして可能とするか〜

*上田 将吾1、高木 泰宏1、山中 真司2、吉田 俊輔1、上羽 孝大1、加藤 祐一1 (1. 結ノ歩訪問看護ステーション、2. 結ノ歩訪問看護ステーション東山)

【はじめに】
 患者の経験についての情報を得るための唯一の方法は,患者と話すこと,そして患者の記述を注意深く分析すること(Perfetti, 2009)である.患者との対話において,セラピストは分析の対象となる患者の言語記述をいかにして可能とするのか.セラピストと患者との対話を分析し,セラピストが患者の言語記述を可能とする『方法』を検討した.

【対象】
 臨床技能の熟達による『方法』の変化を検討するため,同一セラピストが認知神経リハビリテーションマスターコース受講後2年目に経験した症例との臨床場面(以下,2年目)と,同10年目に経験した症例との臨床場面(以下,10年目)の録画データを対象とした.症例は,2年目は脳梗塞後右片麻痺を呈した60代(当時)男性,10年目は脳梗塞後右片麻痺を呈した70代(当時)男性であり,ともに右足底で踏む板の枚数を識別する課題を実施していた.録画データは2年目が約15分,10年目が約9分であった.

【方法】
 録画データが含む言語的発話と身体動作を,会話分析で用いられる記法(森・田中, 2023)に準じて書き起こし,トランスクリプトを作成した.患者の言語記述が語られる場面を切り出し(断片),セラピストが用いていた『方法』を分析した.

【結果】
 切り出された断片は,2年目で10,10年目では15であった.セラピストが用いる『方法』は10種類に分類され,2年目では“探索の要求”“要約と説明”,10年目では“モダリティ変換の要求”“沈黙”などが用いられた.共通して用いられた方法に“注意の誘導”“反復”があった.

【考察】
 2年目に特徴的な方法として“要約と説明”があった.これは患者の言語記述をセラピストの言葉で要約したり,論理的で客観的な説明を与えたりするものである.一方10年目に特徴的な方法として“モダリティ変換の要求”があり,患者自身の言語記述や主観的経験を重視する傾向がみられた.以上は2年目と10年目でセラピストの視点が変化したことを示唆すると考える.しかし,症例の特性に合わせて『方法』を変更する可能性があり,全てをセラピストの経験年数に帰結することはできない.より多くの臨床場面やセラピストが用いる『方法』を検討し,患者の言語記述を可能とする『方法』を確立したい.

【倫理的配慮,説明と同意】
 動画の撮影に際して説明を行い,同意を得た.匿名性に十分な配慮を行った.