Riabilitazione Neurocognitiva 2023

Presentation information

一般演題

ポスター発表

[P3] 神経系(下肢・体幹)

[P3-03] 立ち上がり時に麻痺側足底の接触情報構築困難で頸部右回旋する左片麻痺在宅者に視覚―前庭覚―体性感覚の統合が有効であった一例

*竹中 準1、舘道 芳博1、野田 雄也1、中木村 繁1 (1. 医療法人社団 秀和会 ファミリークリニックこころ)

【はじめに】
 立ち上がり時に麻痺側足底の接触を認識できず,頸部右回旋する左片麻痺者の訪問リハを経験した.三次元空間における行為は多感覚性を有し,視覚―前庭覚―体性感覚の関係が主要なテーマである(Zernitz,2022).長方形の表面素材を両足底に使用した訓練により視覚―前庭覚―体性感覚を統合し,立ち上がり改善に効果を認めたので報告する.

【症例】
 脳梗塞により左片麻痺を呈する80歳代女性,発症後8年経過,Br.stage上肢Ⅴ,手指Ⅵ,下肢Ⅴ,表在覚中等度鈍麻,深部覚軽度鈍麻,ADLは更衣や排泄で下衣操作不十分,入浴で介助を要する.立ち上がり時に左足底を接地せず頸部・体幹右回旋し「左足が床についているかわからない」と記述し,離殿を繰り返して立ち上がる状況であった.両踵間の距離は適切に認識でき,左右比較により左側の情報構築が可能であった.

【病態解釈・治療仮説】
 左足底の触圧覚や重量覚の認識が乏しく,頸部・体幹の軽度右回旋位を正中と誤認していた.左側のみでの運動イメージ想起は困難だが2ヶ所まで注意を向けるのは可能で,右側のイメージ移行や左右比較により左側の運動イメージ想起を行えた.そこで,両下肢の相互関係性から左足底の接触情報を構築し,頸部・体幹の空間情報も含めた視覚―前庭覚―体性感覚情報の統合により行為が改善すると考えた.

【訓練と結果】
 幅30㎝×縦15㎝の表面素材を座位で両足底に接触し①表面素材はどちら向きか頸部回旋で回答,②左右の足底それぞれどの部位に接触したか,識別課題を実施し両足底の接触情報と視覚,前庭覚,頸部・体幹の空間情報の統合を促した.結果,立ち上がり時に左前足部を接触し,頸部と体幹の右回旋を制御して立ち上がり可能になった.「左の親指が床について,力が入るのがわかる」と記述の変化もみられた.

【考察】
 視覚―前庭覚―体性感覚統合の欠如により,進行方向と頭部の向きが不一致となる(Rigoni,2020).左側のみの注意・運動イメージ想起が困難な症例に接触の左右比較から左前足部の触圧覚情報構築したことに加え,視覚と前庭覚と空間情報の統合により頸部と体幹を制御でき,立ち上がり改善に繋げられたと考える.立ち上がり時に麻痺側足底の接触を認識できず,頸部右回旋する左片麻痺者に視覚―前庭覚―体性感覚の統合が有効であることが示唆された.

【倫理的配慮】
 本発表に関し書面で同意を得た.